養父吹雪と雪村








入りなれたその玄関だけど、(安っぽいそのドアを開けたらあったかい毛布のにおいがする)今日ばかりは開けられない。雪村はそわそわと意味もなく足踏みした。どうしようどうしよう。だって、このドアを開けて入ってしまえば、吹雪は「先輩」じゃなくて、「お義父さん」になってしまうんだから!ひょんなことから吹雪の籍に入ってしまった。それが男同士の恋人が、なら良かったんだけど、吹雪は雪村に惜しみ無く「家族愛」を与える気なのだ。いや、過去から今までも…。でも雪村は、それでよかった。恋なのか憧れなのかそれとも、な曖昧な気持ちにハッキリとそれなりの立場が与えられれば、吹雪はきっと雪村のなかで「お義父さん」になるだろう。


だけど、やっぱり。一歩、この足を踏み出してしまえば大きく変わってしまう関係に、怖いわけじゃなくて、少しだけ躊躇してしまう。重いなあ。父から持たされた白いスポーツバッグ、土で汚れてしまった。(ごめんなさい)今からでも良いから、はやくもとの家に帰ろうか。(いつでも帰っておいで)
くしゃみをひとつ落とす。
このドアを開けてしまえば、きっと。すうっと、冷たい空気を吸い込んで、ドアを開ける。
大丈夫、先輩と後輩という関係に、未練はない。






thx.joy


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テーマ「人外ファンタジー」
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