雨
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「今日は台風が来るんだって」
すでに強まりつつある雨が、彼の部屋の窓を叩く。
「へー帰れなくなっちゃったなー」
最初から、帰す気なんてないくせに。
そう呟くと、へへっ、といたずらっ子のように笑った。
「明日も学校あるのに」
「うちから行けばいいっしょ?」
「やんなきゃいけない宿題もあんのにー」
「だいじょぶ!俺いっつもやってねーし!」
「…だいじょばないじゃんそれ…」
呆れて、布団の中に潜り込む。雨が降っているせいか、少し肌寒い。
「なあーno nameーそんなに俺と一緒にいんの、やなのー?」
甘えた声を出して、後ろから抱きついてくる和成。
まったく。あざとい。どこでこんなこと覚えてきたんだ。
「やだって言ったら?」
「犯す」
「こわ」
想像以上の返答に若干引いたが、私の肩に顔を埋める和成が可愛いからまあ良しとしよう。
ふと目が覚めると、部屋の中は藍色に染まっていた。和成も寝てしまっているようで、首にかかる寝息が少しくすぐったい。暗くて時計は見えないが、私の腹時計によると、もう晩ご飯の時間はとっくに過ぎてしまっているようだ。
雨、強いなあ。
雨はなんだか苦手だ。小さい頃は、よく雨が降る度に泣いていた。高校生になった今、さすがに泣くことはないが、少し不安な気持ちになる。
「かずなり」
名前を呼んでみるけれど、起きる気配はない。
「かずなり」
体を反転させて、和成に抱きつく。和成の胸に耳を押し付ければ、鼓動が聞こえた。
「やっぱ私、和成とずっと一緒がいいな。」
聞こえていないだろうけど。
雨の音は、気にならなくなっていた。
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