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どこもかしこも、カップルで溢れかえっていた。
そんな中、女ひとりで歩くわたしの姿を、誰もが哀れみの顔を浮かべて振り返る。
わたしはクリスマスに用があるわけじゃないのよ…折角の冬休みを楽しもうとしてるのよ…!
なんて理由をつけて、表参道を歩く。
そうそう。服でも買って、美味しいパンケーキを食べるのよ…!ひとりで!
別に宮地のこと忘れようとかそんなんじゃなくって。
あれから、メールをしなくなった。
正確に言えば、メールを返すのをやめた、だが。
いつも5通程度しかメールのやり取りをしていなかったのだ。メールをしてもしなくても、大して変わるまい。
わたしが返さなくても、必ず1通だけ送ってくる宮地は、本当にいい彼氏だと思う。
問題は、わたしだ。
彼からのメールを読む度、黒いモヤモヤがわたしを包む。
浮気してるのかな、とか、わたし以外のマネージャーからタオルやドリンクを受け取ってるのかな、とか、つまらないことを考えてしまう。
別にこんなことは、高校時代にもあった。でも今は違う。
宮地に会えない。
宮地のことを思い出すだけで、積もりに積もった不安やストレスが涙となって、目から溢れる。
距離がこんなにも人を不安にさせるのか。
だから、ちょっと宮地から離れなきゃ。
街は、思った以上にカップルで溢れ返っていた。
「きれいだなあ」
キラキラと街を彩るイルミネーションは、今のわたしには少し眩しい。
去年、ウィンターカップの前に連れてきてもらったなあ、なんて思い浮かべるのは、思い出したくない彼の姿。
あのときは、まさか一人でここに来ることになるとは思わなかったなあ、なんて独り言ちて、逃げるように店の中に入った。
「いやー買いすぎちゃった」
両手が塞がるほどの大荷物に、苦笑いを零す。
次はパンケーキ食べなきゃ、と、店を探すためにスマホを取り出し画面を見ると、そこには何十件もの不在着信。相手は全て宮地だった。
「…え?あ、宮地?」
なんで、どうして。
思考が追いつかない。
メールが届いていることにも気付き、十件近く着ていたそれの一番最初のものを開く。
『お前表参道に行くって言ってたよな。今どこ』
なんで急にそんなこと。
『なんで最近メール返さねえか知らねえけど、今どこかぐらい教えろ』
『もしかしてお前誰かといんのか?』
『もしお前一人だったら今どこか教えろ』
全て、今どこにいるのか、一人なのかと尋ねるものだった。
なんで、今そんなこと。宮地は今、向こうで試合のはずなのに。
ぐるぐると回る脳内に軽く目眩を起こしていると、電話の着信音。
震えながらも、応答ボタンを押す。
「やっと出やがったか!!!あとでぜってえ轢くぞ!!!」
「宮地…なんで」
「なんでもクソもねえよ!あ、いた!」
いきなりそう叫ばれ、頭が混乱する。
宮地、なんで急に電話なんか。なんでわたしを探しているの。
そう尋ねようとすると、誰かに後ろから頭を叩かれた。痛む頭を押さえながら振り返る。
「いったあ!!!」
「うるせえ!俺に2時間も探させた罰だ!」
そこには、いないはずの宮地がいた。
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