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大学に入ってから、もう8ヶ月が過ぎた。
街はクリスマス一色だ。去年のこの時期はウィンターカップで忙しくて、まともに宮地とクリスマスを過ごさなかったなあなんて染み染みと感じていた。
「ね、レポートもう出した?」
「あー手付けてないわー」
「18日提出だよ?それ出さないと冬休み入れないって教授言ってた」
「まじか、やば」
宮地とはまだ交際を続けている。日に日に減っていくメールのやり取りの回数は、忙しさのせいだろうと、勝手に結論づける。仕方ない、バスケ部の活動が大変だと以前聞いた。それのせいだ。サポートをしてあげられないのは歯がゆいが。
前に会ったのは、夏休み中のお盆の時期だったか。お墓参りからのデートという、貴重な体験をしたんだっけ。宮地の髪は少し短くなっていて、童顔な彼を更に幼くさせていた。あれからもう、二つ先の季節になってしまった。次会えるのは、お正月だろうか。淡い期待と、深まる不安の二つを抱え、わたしはクリスマスを目前に控えていた。
「ね、遠距離恋愛中の彼氏とまだ続いてるの?」
「何よ藪から棒に」
「あのさ、クリスマスに合コンあるんだけど、人数足りなくて。良かったら出てくれない?」
「あーパス。ちょっと用があって」
「えー?彼氏こっちに帰って来たりすんの?」
「んーまあそんなとこ」
そんなわけない。試合で行けないって、この間メールが届いたもの。今年のクリスマスはひとりぼっちだ。
「そっかー!よかったじゃん!楽しんできなよ!」
「ん、ありがと」
友人に嘘を吐いてしまうのは心苦しかったが、宮地がいるのに合コンなんて行けるか。なんて考えてしまうわたしは、あのときから成長できないままだった。
それは、いい意味でなのか悪い意味でなのか。
「大学の友達がさ、クリスマスに合コンとか誘ってきて。彼氏戻ってくるから行けない〜なんて嘘吐いちゃった」
「合コンなんて行ったら轢くぞまじで」
「絶対そう言うと思ったから断ったんじゃん!まあ、予定がないクリスマスには、一人で表参道にでも行ってやるわ」
「おっまえ…それ寒い」
「うるさい。リア充を爆発させてくんのよ」
月に一度の電話の日。練習で疲れている彼を気遣い、いつも10分程度で電話を終わらせてしまうのだが、今日はいつもよりも、少し早かった。
「わり。疲れてるからもう寝るわ」
「ん。今日もお務めご苦労様でございました。おやすみ」
向こうが切るのを待って、耳から携帯を離した。
通話時間は5分弱。もっと話したいことあったのになあ、と、少し寂しく感じる。
なんだか最近、宮地の様子がおかしい。
そっけないというかなんというか。
これが世に聞く、倦怠期というものだろうか。いや、わたしは倦怠感を感じていないので、宮地の一方的な感情か。
遠距離恋愛での倦怠期は手強いという。
果たして、どう抜け出せばよいのか。
「ん、いや待てよ」
もしかしたら。
考えたくないけどもしかしたら。
「新しい女でもできた…?」
いや、まさか。
確かにチャラいが、今まで浮気なんかしたことなどなかった。
そんなわけない。
そう思えば思うほど、息をするのが苦しくなってくる。
「宮地の、ばか」
頭いいくせに、ばか
いつだったか、彼に吐き出したその言葉を思い出した。
そして、重い気持ちのまま、クリスマスはやってきた。
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