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目が覚めると自室のベッドで寝ていた。
あの後のことはよく覚えていない。ただ頭が真っ白になってしまったことしか。
ああ、そうだ。タカオくんが
「俺はno nameサンが好きだよ」
なんて言うから。
学校行きたくないなあ、なんて考えてしまうのはきっと、その答えがNOだからだろう。折角できた友達なのに、恋愛絡みで失ってしまうなんて。しかし答えを保留して期待させるのも酷な話だ。ここはあっさり振ってしまおう。
「…というわけなので貴方とは付き合えない」
タカオくんを屋上に呼び出し、そう告げる。できるだけ傷付けないように心がけたが、彼は酷く傷付いたような顔をしていた。
「鈍いっていうのは、ここまで来ると罪っしょ」
泣きそうな顔で彼はそう言った。わたしには理解できなかった。
ただ、彼のそんな顔を見ると、わたしまで泣きそうになってしまった。
「ヒントをあげる」
縮められた私たちの距離。
わたしは抱きしめられていた。
思わずタカオくんの服を掴む。
ああ、呼吸ができなくなるほど、心臓が痛い。
「君はきっと、まだ、この感情を知らないよ」
体は離れたが、顔の距離はまだ近いまま。
顔が熱い。確かにこの感情は知らない。でも知っている。
最初は、あのときだ。タカオくんが始めて話しかけて来てくれたとき。でも、あのときよりずっと強い。無意識にタカオくんの手を握った。それを合図にして、彼はわたしの腰を引き寄せた。視線はわたしと交じ合わせたまま。
「いや、だ」
「なんで嫌なの?嫌なら、なんで目を逸らさないの?嫌なら、なんで俺に触れたの?」
そう、わたしは、酷く矛盾している。何故わたしが彼を拒絶するのか。そして、何故拒絶しておきながら欲するのか。わたしという人間を見られるのが途轍も無く嫌だからだ。キラキラと輝いている貴方に、詰まらなく、何の取り柄もないような、そんなわたしという人間を見て欲しくないからだ。なのに、その目に映るのはわたしだけであって欲しいだなんて、そんな矛盾した願いを持ってしまった。わたしはいつからこんなに欲張りになってしまったのだろう。できることならどちらの願いも叶えたいだなんて。
分かりたくなかった。そんなこと。頭がぐちゃぐちゃになるからだ。
どうして学校に行きたくなかった?それは彼に会えばきっと心臓が苦しくなるからではないのか?
他にもいくつか思い当たる節がある。それは、きっと、、
「no nameサンが笑うのは俺の前だけで、それにすげー優越感感じてたんだけどさ、その笑顔の理由は何?俺のことどう思ってたからなの?」
そんなのは、わからないよ。
ただ、わたしの心をかき乱すこの熱は、友達に対してのものじゃない。
「もう一回言うよ。俺は、no nameサンが好きだよ」
ずるいなあ、
その一言に尽きる。
ここまでされたら、頷くしかないじゃないか。
嬉しそうな高尾くんの笑顔に、目眩がした。
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