※軽めの性的表現あり






「ほーんと、名前ってば酒に弱いんだから。オレだってまだそんなに酔ってないっつーのぉ…」

「しゅーせ…ねむい」

「はいはーい、ベッド行きましょうねぇ、お姫様」



たまたまお互い非番が重なった、だから酒を飲もうと言い出したのはどちらだっただろうか。もう何度もこういうことはあって、名前が先に潰れることは初めから縢にはわかっていた。



つまみを作るついでに、口直しのデザートも作ったのになぁ。縢は冷蔵庫の中のそれを思い出した。初めてにしてはきれいに焼き上がった、甘いクリームブリュレ。
小さな楽しみは明日の朝にとっておくことにして、今はお姫様の相手をしよう。うんうん頷きながら縢は独りごちた。



「しゅーせーねよー…」

「オレ片付けしてくるから、ちょっと待っててよ、ね?」

「やだやだぁ、いっちゃやだ…」

「あーはいはい、わかった」



ほんと、酔ってるときは素直なんだから。名前が横になっているベッドに腰掛けて言えば、んー?と気の抜けた返事が返ってくる。


「そーいやしばらくしてないねぇ」


縢は、名前の頬にゆっくり手を伸ばす。指で優しく撫ぜれば、名前は甘えるようにふにゃふにゃ笑った。その頬はアルコールで上気し、真っさらなワイシャツは随分とはだけている。



縢は名前の双眸を手のひらで覆い、その唇にゆっくりと自分の唇を重ねた。ちゅ、ちゅ、と拙い子どものようなキスを降らせる。

いつもだったら躊躇いなく舌を入れるところだ。けれども酔ってふにゃふにゃになっている名前は、なんだか今日作ったクリームブリュレのようにとろとろに甘やかしたくなる。


「っ、ん、う」

「ちゅ、ふ…ん?名前…?」


ふと、名前の手が縢の頬に伸びる。それと同時に名前の頭ももぞもぞ動く。何かと思って縢が名前の両目を遮っていた手をどかすと、名前はいきなり上半身を起こして縢にくちづけをした。


「ん!?んんっ、」

「ふっ、んぅ、」


先程の縢のものとは違い、名前のキスは濃厚だった。香りも、味も、すべてがあまいキスに、縢は目眩がするのを感じた。


しばらくしてようやく名前の唇が離れ、力の抜けた身体も意志をなくしたかのようにゆっくりとベッドに沈む。
自分からキスしたくせに息を乱す名前を見て、縢は急に愛おしさを感じた。それと同時に、欲望が身体じゅうをむくむくと這っていく。


「はっ、おれその気になっちゃったよ、名前、」

「ふ、はぁっ…しよ、しゅーせっ…」


焦ったような声に、ぞくぞく、と甘い痺れが縢の背中を駆けた。潤んで情欲を孕んだ焦げ茶色の瞳に見つめられる。ああ、もう、余裕なんかない。

ワイシャツのボタンをひとつずつ外していくだけで、名前の身体はその度びくびくと跳ねる。
唐之杜ほどではないがかなり豊満な胸を、ゆっくりと縢の指が這う。


「相変わらずやぁらけーな…ほら、名前」

「んっ、ふぁ、あっ」

気持ちよさと酔いと眠気で訳がわからないことになっているのだろうか、ん、ん、と喘ぎながらうとうとする名前に気付き、縢は彼女の胸の頂に触れた。途端、切なげに潤んだ瞳で縢を見つめながら、名前は腰を揺らした。


「しゅーせいっ、もっ、いいからぁ」

「おれも、も無理だわ、」


縢は小さく笑って、名前のスラックスに手をかけた。今は何も考えず、このあまい波に身を任せよう。












「秀星、起きて、」

「ん…今何時…?」

「まだ6時。今日のシフトは?」

「えっと、確か日勤。名前は?」

「あ、わたしも。何か食べるものとかある?」

「うーんと…昨日作ったクリームブリュレなら。あとは簡単な朝ごはんなら作れるよ」

「クリームブリュレ!?」


甘い物好きの彼女の目が輝く。朝ごはんのことはどうやら耳に入っていないようだ。


「オレのとっておき、きっとお姫様も気に入ると思うぜ。紅茶もいれようか?」

「わ、わ、さすがクッキングアイドル!」

「うわ、それ言っちゃう?かっこよくキメたのに、それ言っちゃう?」


眩しく笑う名前につられて、縢も顔がほころぶのを感じた。

ああ、次のデザートは何にしようか。







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