甘い物より辛い物が好き。髪を染めるよりも日本人らしい黒髪が好き。背の高く気遣ってくれて包んでくれる人が理想だったはずなのに。

「名前ー、そのガム一個くれよぃ!」

何でこんなのが彼氏なんだろう。真逆と言っていいほど好みは違い接点など告白されて付き合うまでなかった。彼の周りは女の子で溢れていたし生憎興味もなかった。どちらかというと幸村くんみたいな王子様がタイプ。今時ベタな下駄箱に手紙なんて誰が入れて呼び出したのかと思い行けば丸井がいて柄もなく顔を赤くして好きです何て言われたら簡単に落ちてしまって今に至る。

『このガムすごい辛いよ?』
「なんだよー…、まぁいっか、その辺の女子にもらってくる。」
『丸井、私というものがいながら他の女に貢がせるわけ?』
「だって頼めばくれるし。あ、やっぱプリン食いてぇ。」

やっぱり合わないものは合わなくてこういうところは付き合う前から分かってた。しかし、こうも気分屋ではこちらもうまく付き合っていけない。あっちにこっちにフラフラと、私にした告白でさえ気分で決めたと思うと怖くて仕方ない。


『お菓子はおいといてさ、私のこと本気で好き?』
「んー、当たりまえだろぃ。」
『プリンにいってるようにしか見えないんだけど。』
「だって今はプリンに集中してっから。」
『じゃあ別れる?』
「別にそれでもいいぜぃ。」

そのままプリンのスプーンを止めず味わって食べていて見向きもしない。流れで流されて言ったなら訂正がすぐにつくはずだが丸井はその気がなさそうだ。ほんと意味が分からない。最初から気分屋なんて私には合わなかった。私からフったみたいになってはいるが冗談をこんな風に返されたら笑うなど無理な話。

『これだから甘い物なんて大嫌いなんだよ。』

携帯を取り出して最近やっとアドレスを交換してメールするようになった幸村くんとのメールを見返す。そのうちににやけが止まらなくなってカーティガンから少し出た手で口元を隠す。それを見ていたのか丸井はジト目で私を見た。

「誰とメールしてんの。」
『幸村くん。』
「ふーん。」

プリンを食べ終わったのかゴミ箱にカップを投げ入れた。天才的ぃ、そんなセリフが似合うほどきれいにゴミ箱に吸い込まれていった。


「やっぱ別れるのナシで!」
『ふざけんな。』

こいつの気分屋には到底着いていけそうにない。



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