『仁王くんいらっしゃい!』
「お邪魔するぜよ。」

色々あったが今は落ち着いていて家に時々遊びに来るようになった。たまに夜までいて泊まることも。そうなると必然的に布団がないために三人横になって寝るのだが暑苦しさは異常。そして今日もお泊まりセット持参のようで泊まることは前提のようだ。

「これコンビニで買って来たからあとで食べるといいきに。」
『ありがとう!…ゼリー?』
「あぁ、この季節暑いしアイスは持って来る前に溶けそうじゃったしな。」
『気を使わせちゃってごめんね。私冷蔵庫に入れとくから奥で精市くんと寛いでて。』

台所でゼリー3つを袋から出して冷蔵庫にしまう。葡萄に桃にみかん。私は葡萄いただこう。といってもこのメンバーで私に選ぶ権利なんてなさそうな気がする。

「仁王また来たんだ、暇だね。」
「幸村こそいつまでおるん?たまには家に帰った方がいいんじゃなか?」
「いいんだよ俺は。」
『お茶入れたよ。』

2人の間を遮って冷えた麦茶を置く。私は精市くんの隣りに座り仁王くんと向かい合う形になった。

「そういえば仁王用に布団買うって言ってなかったっけ。」
『あ!』

この前仁王くんが帰った後2人でそんな話をしていた。最終的に買い物に行く日がなく放置していたのだ。私一人では運べる量ではないし。通販や郵送にしようとしてカタログに付箋を貼ったまま机に置かれている。

「普段から使えばいいやろ。何もいつも2人で寝んでもいいに。」
『そうだね、精市くん用にもなるし。』
「俺は今まで通りでいいよ。干すのも大変だから。」

そう言って精市くんは個々で寝ることをかたくなに拒む。

「夏場だし川の字で寝るの暑そう。」
『クーラー付けよう、あと離れて寝てね。』

暑さに耐えきれず昨日やっとクーラーのブレイカーを上げたばかりだ。風や扇風機でしのげない私にとってクーラーは名器。毎年無くてはならない夏の友になっている。しかし仁王くんは不満そうな顔をしている。

「俺クーラー苦手なんじゃけど。」
『まじですか。』
「ならソファー空いてるよ?」

にこにこ笑い勧める精市くんに対し仁王くんの顔は引きつっている。犬猿の仲ならぬ豹狐の仲。仁王くんが精市くんに頭が上がらない理由は私は知らないが何かしらの上下関係があるのだろう。

「…クーラー我慢する。」
『本当に無理だったら言ってね?すぐ止めるから。』
「それよりまず今日の献立考えたら?それこそノープランなんじゃないの?」
『あああ!』
「ほな一緒に買い物に行くぜよ。」

ガシィ、そんな擬音がつきそうなぐらい強く腕を掴まれた。

「仁王はお客様なんだから休んでてよ。」
「いーや、逆にお世話になるからこそ必要じゃ。」
『仁王くんはお客様だし仁王くんの好きな献立でいいんじゃないかな。』
「俺じゃなくて仁王を選ぶの?」


じゃあ私にどうしろと。
3人でいけたら万事解決なんだけどなぁ。





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