超会議とはあの有名なニコニコ動画の数少ないイベントである。そこにはボカロPや歌い手などが呼ばれたりもして生で見て楽しむのだ。しかし私は抽選に外れたため泣く泣く諦めていたのだが、なんと光くんは当選していたらしく、忍足の名前で出したものも当選し2人分の参加が可能。そこで忍足の分で私が代わりに行くことに。因みに忍足の許可は貰ってはいない、光くんもまさか当るとは思ってはいなかったから名前を使わせて貰ったことも内緒。 「ま、しゃーないっすわ。」 こればかりはしゃーないで済む問題じゃないけど。当日は越前くんも来るとか。桃城くんは残念ながら外れちゃったみたいだけれど。 そして今は光くんと2人で会場前。私達は万が一に備え顔バレしないように眼鏡をかけている。東京だから知り合いと会うこともまずないはず。でも学校に、学年にニコ動が好きな人が必ずいるはずだから気をつけねば。 「名前さん、あの柱に持たれてるの越前じゃないですか?」 『あ、ほんとだ!』 様々な広告が巻かれた柱の一角に帽子を深くかぶった少年がもたれ掛かっている。手を振りながら近付いてみても音楽を聞いているのか気付かない。イヤフォンを片耳から外してやるとようやく私に気付いた。 「あ、不二先輩の彼女じゃないっスか。」 『だから違うって幼馴染みだって。』 「怪しい。」 「越前、名前さんは俺の嫁だから覚えとき。」 「それはないっしょ…、ってやめて欲しいっス財前さん。」 光くんが越前くんの帽子を取り上げてくしゃっと撫でた。いや、髪を軽く引っ張った。それが原因で喧嘩勃発。 『2人とも喧嘩してないで早く行こ!』 「…越前とは別で。」 「…財前さんとは別で。」 『そんなこと言わないで一緒に楽しもう。』 手を引いて歩くと周りを見ていなかったせいで会場入口前で前の人の靴に躓きもたれてしまった。前の人も気付いて振り返る。 『すみません!』 「あ、気にしないでください。」 栗色の前髪の長い私ぐらいの年の人。軽く頭を下げてそれで終わりかと思ったら後ろの2人と栗色の髪の人は目を見開いて固まった。 「お前、越前と四天宝寺の財前か!?」 「げ、日吉さん。」 「氷帝の。」 とんでもない出会いをしてしまったようだ。日吉という少年。これからまた会う機会があるようなないような。また随分先の話である。 prev|next |