今日もベッドの上で彼と2人きり。縁に周助が座ってその足の間に私が座る。私の髪で遊んでいる彼の指は白くてとても綺麗で壊れそうなほど細い。のけ反るように首を上にあげて目線を合わせればふわりとほほ笑んだ。

『私の髪触るの好き?』
「長くていじり甲斐があるからね。」
『なにそれー、』
「少し待ってて、電話かけて来るから。」

私をベッドに寝かせて彼は部屋を出て行った。一時間や二時間毎ぐらいに誰かと電話をしにこうして出て行く。誰と話してるのかは分からないけど戻って来る時は必ず辛そうな顔をしている。そして私の肩に顔を埋めてごめんねと呟くのだ。

『つまんない。』

この部屋には必要最低限なものしかない。だから周助がいないと私はすることも考える事もない。窓は常にカーテンが締め切られていて開ける事は許されないため完全なる密封空間。唯一あるのは色あせて破れた写真の入ったフォトフレームが一つだけ。1人は多分周助、もう1人は奈緒ちゃん、破られた先にいるのは誰?

「ただいま、またそれを見てるのかい?」
『だって気になるんだもん。』
「大丈夫、じきに分かるから。」
『そうなの?』
「うん、もうすぐ君のナイトが迎えに来る頃なんじゃないかな。」
『?ナイトは周助でしょ?』
「何で?」

毎日一緒にいてくれて大事にしてくれるじゃない。当たり前のように私が言うとまたごめんねと言って私を抱き締める。周助は何かに苦しんでる。私はただ彼を愛す事しか出来ない。周助が私の髪が好きなように私も彼のチョコレート色のふわふわしたストレートが大好き。ゆっくり撫でているとシャンプーの香りが漂った。髪にキスしようとしたその時。

突然地響きを上げながら部屋が崩れ出した。崩壊を初めてすぐ側まで暗闇が私たちを飲み込もうとしている。慌てて彼を引きはがし一緒に逃げようと見渡すがもう逃げ道なんてない。ベッドが暗闇に浮いているだけ。なのに知らん顔で周助が背中から顔へと手を移動させて私の顔を包み込んだ。

「君は何も知らないのに僕の世界に入り込んで来て計画が崩れちゃったよ。」
『?』
「少しの間だったけど君との恋人"ごっこ"はほんとに楽しかった。」
『しゅう、』
「苦しめてごめん。…おやすみ橙梨。」

二度目の暗闇が私を襲う。待って、おいて行かないで。


独りぼっちは寂しいの



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