「和解、という事でいいのだな。」
『うん。』
「…悪いがここからは茅野と2人で話がしたいから仁王と精市は席を外してくれるか?」
「それは俺の前じゃできない話なのかい?」
「まぁ、な。」
「橙梨は俺にいて欲しいよね?」

眩しいほどの笑顔で私に笑いかけ手を握るが要するに私の側を離れたくないがためのものである。柳くんは溜め息をつく始末だ。何とか宥めようと試みるが効果はない。痺れを切らした柳くんが口を開こうとすると仁王くんが精市くんの首根っこを掴んだ。そのまま強引に持ち上げ引きずって行く。

「柳には借りがあるから今日は協力してやるぜよ。」
「ちょっと仁王痛いって!」
「昼の精市は暴れなくて助かった、仁王ありがとう。」
「いつまで引き止めれるか分からんからお早めにな。」

手をひらひら振って出て言った。


「本題に入るか。」

飲んでいた紅茶のカップをおいた。私は仁王くんの話はあるとは聞いていたが柳くんから話があるとは聞いていなかった分余計緊張する。

『それはいい話?』
「いや、あまり聞いて嬉しい話ではない。ただお前は知っておいた方がいいと思ってな。」
『そっか…。』

テーブルの下でスカートを握った。やっぱりいい話ではないものを聞くのは気が滅入る。

「初めて精市に会った日を覚えているな?」
『うん。』

あれはバイト帰りの夜。女を殺していたのを目撃した日だった。

「精市は数週間世間を騒がせるほど女を襲っていた。…なら不思議に思わなかったか?」
『何も不思議に思う事なんてないよ。』

「常に血を求める精市が何故もっと前からニュースにならなかったと。」
『あ…。』
「それはつまりお前と出会う前に主人が、女がいたという証明になる。」

女がいた、それは私が彼にとっての2番目の女の証拠。あの笑顔も触れる手も私だけが知っていると思っていた夜の性格も私じゃない誰かのあとに向けられたものだと思うと少し悲しい。

「その女は精市と仲がよかった、今のお前達と…いや、それ以上かも知れないな。しかし茅野と精市が出会う3か月に亡くなった。」
『死んだから契約が切れて血を貰う相手がいなくなったから無差別に襲ったのね。』
「あぁ。」


だとしたら分からない、何故私をあの時殺さず生かし契約を申し出たのか。彼女を亡くして数か月ならまだ忘れられなくて新しい彼女なんて作りたくないはず。別れたわけじゃないのだから。

「特に茅野と彼女の相似点はない、顔、雰囲気も。理由は最初俺にも分からなかった。だがあの日のおかげではっきりと分かった。」
『そんなに似てないんだ。あの日って?』
「仁王の事件だ。残っていた血痕から血液検査をしたんだが…茅野、お前医者から自分の血液について何か言われた事あるだろう?」
『極力怪我はしないように言われたりはしたけど…何で?』
「お前も彼女も極めて珍しい血液型ということで一致した。精市にも以前確認したが珍しい血液型の者は見ただけで目が離せなくなる本能があると。」

乾いた笑いが零れる。柳くんは目を見開いて私を見つめた。

『結論を言うと私は、彼女と重ねて必要とされているって事なんだね。』

血と言えど私は私、彼女は彼女。重ねてなんて欲しくなかった。こんな辛い思いを知る事になるのならいっそあの時殺してよ。

彼の目に私は映っているのだろうか



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