精市くんを家まで運んで貰い私は学校に休む連絡を入れた。服はジャッカルくんという黒い子が持って来てくれたおかげで綺麗だが体は血なまぐさいのでお湯も沸かす。精市くんは私のベッドで相変わらず夢の中だ。そんな彼の服をめくり傷を確認する。

『うわ…、ほんとにもう塞がってるし。』

降れたり撫でたりを繰り返していると手首を掴まれる。

「寝込みを襲わないでよ、えっち。」
『別にそんなつもりは…。えっちって精市くんそんなの言うんだ。』
「分かってるよ。俺だってふざけたりするけど。」

ベッドから起き上がろうとした精市くんは起き上がれず途中でまたベッドに吸い込まれるように落ちた。本人もびっくりのようで目が見開かれている。

『大丈夫?』
「だと思ったんだけど…、力入らないや。ちょっと失血し過ぎたかな。」

乾いた笑いと共に言う。見た目は傷がなくてもダメージは普通と同じあるのだろう。あれだけの傷だ、痛いだろうし貧血が起きてもおかしくはない。これは私を庇ったからであって私がいなかったらこんな事にはならなかった。

『寝てていいよ、ご飯持って来るし。先に私お風呂入らせて貰うね。』
「ありがとう。夜少し血貰っていい?」
『…いいよ、夜元気じゃなかったらね。』


ドアを閉めて部屋を出る。うわ、約束しちゃった。血をあげると言ったが私も噛まれるだけあって多少は痛い。夜の彼は荒々しいから最初突き立てられた時死ぬかと思った。そんな事を考えながら脱いでゆく。脱いだ服は洗濯機に放り込んだ。返さなければならない服なので大事には扱う。

『あったかい…。』

包み込んでくれる湯は心を癒してくれた。それでも引っ掛かるものは幾つもあった。仁王くんの事、柳くんの事。仁王くんとはもう一度ちゃんと向かい合って話し合いたい。解決しなければならない問題だ。

『大変だし。』
「そうだね、まだたくさんしなければならない事があるね。」


…あれ?何で私自問自答してるんだ?

「橙梨何ぼーっとしてるの、入るよ。」
『何でいるの!?』
「だって血や汗の臭いして寝苦しかったから。」
『動けなかったじゃん!』
「あぁでもしなかったら隙なかったし。俺名演技だっただろ?」

楽しそうに笑いお湯をかけて来る。心配して損した。今回ばかりは本気で腹が立った。

『平気なら平気って言ってよ…!すっごい心配したのに!』

外方を向いて膝を抱え込んだ。


「心配してくれてありがとう。」
『…馬鹿じゃないの。』

素直になれないのはお互い様



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