午後23時00分。コンビニを出て家に向かう。バイト帰りの雑誌チェックは毎日の日課になっていた。一人暮らしの私に門限などというものはなく毎日が自由奔放。それでたまに暇になるからこうしてバイトを始めたのだ。お気に入りのプリンが入ったコンビニ袋を提げて暗い夜道を一人歩く。

街頭はある、がほとんど機能はしていない。最近ニュースで通り魔が出たとか何とか。決まってこの道に現れ若い女ばかりが狙われているらしい。まぁ私には関係ないだろう、色気もないし可愛くもない。

ショートブーツのヒールだけがカツンと音を鳴らした。


「いやぁぁぁぁああ!」


突如響いた悲鳴。私のものではない若い女の声。2、30メートルぐらい先に2人の人影を見つけた。息を飲んでヒールの音をたてぬよう一歩一歩近付いては電信柱の裏に隠れる。


「…あーあ、死んじゃったかぁ。」

だらんと男の方にもたれ掛かった女を男はいとも簡単に投げ捨てた。

「ったく不味いなこの女、顔は悪くないのに。血も臭いし今日はハズレか…。」

男は口についたであろう血を舌でなめてニヤリと笑った。街灯が薄暗くてよく見えないけれど人ではありえないものがついている。

『猫…?』
「…誰だい?そこにいるのは。」

しまった、声に出している、そう思っても時すでに遅し。それでも見つからないようにと口を手で覆い体を必死に電信柱の陰に隠す。しかし場所を分かっているのか知らないが着実に距離は縮まって来ている。次第に私たちの陰が重なった。


「ねぇ、見てたんだろ?今までのコト。」

男は笑いながら私の奥の壁に片手をついて見下ろした。

「それと俺猫じゃないし、あんな低能な生物と一緒にしないでくれない?豹だからさ、ほら、牙ー…。」

もう片方の手で自分の右上唇を持ち上げ鋭く光る牙を見せつけられる。恐怖でそれどころではなかった。彼が猫だろうが猫じゃなかろうが私はきっとさっきの女みたいに、

『…殺さないで、お願い、助けて。』
「嫌だなぁその発想。みんなそう言うんだよね口を揃えて。でもさぁ、見ちゃったもんは消せないし…。」
『お、願い…。誰にも言わない!だから!』
「じゃあ…。」


俺を飼ってみない?

男は楽しそうに提案して尻尾をゆらゆらと揺らした。



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