朝日が昇りみんなの姿が人間に戻る。仁王くんと精市くんはまだ寝たままで微動だにしない。一晩寝ず叫んだり逃げたり体を酷使していたため本当はいますぐにベッドにダイブして寝たいけれど帰れずにいる。こんな格好で町中に出れないからだ。柳くんの知り合いが届けてくれるまで待つ事になった。

「お前の名前を聞いてもいいか?」
『茅野橙梨。』
「橙梨、…頼みがある。」
『何?』
「仁王の事はなかった事にして欲しい。」

その言葉に一番に反応したのは慈郎だ。

「そんなのおかしいよ!橙梨がどういう思いをしたか分かって言ってる!?」
「それを踏まえてだ。仁王はまだ更生の余地がある。」
『根拠は?』
「俺が作った薬にある。」

慈郎を宥め柳くんの話に耳を傾ける。私にとって有益な情報になることに期待をして。


「俺は…、いや俺たちは獣化人間の研究をしている。サンプルとは聞こえが悪いが精市や丸井など様々な奴等に協力をしてもらった。そこで獣化を押さえるために彼らの血液などを採取し薬品を作ったのだ。そのおかげで今日の丸井の獣化の厄介は押さえられている。しかし、妖孤である仁王には薬品が効かなかった。」
『薬品が聞かない?だって仁王くんだって一応狐なんでしょ?』
「俺もそう思った。だが副作用が出たんだ。それがこの仁王のコレクションという狂気を目覚めさせてしまった。」

信じられない。ということはこの騒動は仁王くんの意志はなくて薬品の副作用で仕方がなかったのか。

「本来仁王の獣化性格はヘタレ、それも手が付けられない確率100%のな。最初に薬を渡したのが仁王の初彼女が家に遊びに来た日だ。次の日彼女が消えて仁王に聞いても分からない、知らないと言っていたからきっとこれも副作用の1つで服用中の記憶が消えたからだと思われる。誤算があったのが俺は2つ仁王に薬を渡してしまった事だ。満月の日に飲めとも言ってしまった。今回謝罪するべきなのは俺の方なんだ。本当にすまなかった…!」
『じゃあ仁王くんは全然悪くなかったんだね…。』

仁王くんを見ると寝ながら涙を流していた。それでも彼を見る度にあの時の記憶が戻って来て恐怖心が拭えない。拭い切れないんだ。かといって柳くんを責めるのも間違っている。実験に間違いは付き物だ。


『みんなまとめて許す。』
「でも橙梨!」
『話を聞いて思ったの、私は誰にも罪悪感を感じて欲しくない。柳くんは助けに来てくれたし仁王くんは仕方がなかったんだよ。』
「分かった、…詫びといってはなんだがまた情報があったら真っ先に伝える。」
『ありがとう、でも1つだけお願いが。』


精市くん運ぶの手伝ってくれる?



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