夕食後隣りに並んでソファに腰掛ける。テレビは着いているものの私も精市くんも見ていない。ただ機械音が流れるだけ。肩に重みを感じると思ったら彼の頭が私の肩に乗っていた。それから私の小指を一瞥し撫でる。

「ちゃんと契約解消して来たみたいだね。」
『うん、指切りもう一回したら消えちゃった。』
「そう…。でも解消したら草食動物臭が強くなった気がするな。」
『そりゃ親友になりましたから。』
「…男女間の友情何て成立するはずないだろ。」

急に不機嫌になって片手で私の後頭部を掴み唇の端をぺろりと舐める。その姿が妖艶で息を飲んだ。近付いてみると益々美人というか整っている。

「男女間に成立するのは愛情、欲情、狂喜。それだけだね、間違っても友情なんて成立するもんか。」
『精市くんは何でそんなに私に関わるものを卑下したいの、うらやましがってるようにしか見えない。』
「まさか、俺に手に入らないものなんかないよ。」

彼は自身あり気に笑った。誰が見ても満たされているであろう彼の中身は全く不完全で歪んでしまっている。優しそうに頬を撫でるその手も私が大切何ではなく私から与えられるモノが自分にとって必要だから。飼い主だなんてよく言ったものだ。ただの餌じゃないか。

「愛はそこら辺の女がいらないほど振りまいてくれる、欲も…同じかな。狂喜はいらない。ほら、完璧だよ。」
『友情は?』
「そんなもの女に求める方がおかしいね。」
『おかしくない、認めようとしないだけ。』
「認めて何になる?友情なんてさ、中途半端な存在。何の利益がない存在はいらない。」
『じゃあ私の存在は?』

愛も与えなければ欲も吐き出せない、狂喜を許さない。彼にとって何の立場もない私をなんと答えるだろう。騒がしく鳴るブラウン管のスイッチを押して静寂に戻した。彼は戸惑いがちに口を開いて私を抱き寄せる。予想外の答えだった。


「きっとそのうち君からの俺への感情を愛に変えてあげる。二度とそんな口聞けないようにね。」

首にじわりと痛みが走って時計を見れば午後11時。やられた。首元から覗く弧をかいた唇に鋭い牙。貧血で今にも気を失いそうな私にお構いなく血を求められる。待ったなんて聞かない強引なこいつに愛なんて誰がやるか。

『私は君に愛を与えない、愛は相互関係にしか生まれない。』
「俺は貰えれるだけで十分だから振りまくのは馬鹿らしいと考えてるんだけど。」


だから早く堕ちなよ橙梨




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