授業は一切耳に入らなかった。教師が話す言葉はすべて筒抜けで頭では忍足との会話がずっとエコーしていた。


『…何言ってんの?忍足頭どうかした?』
「誤魔化しても無駄やで。首、それ契約したんやろ。そんな傷そう簡単に着くもんでもんやない。」
『何で断定出来んのよ。』
「俺の従兄弟…、謙也っていうんやけどな、あいつも夜獣に変わる。だから分かるんや。俺は血を継がんかったから変わったりはせんけどな。」
『その謙也くんも性格変わったりとかする?』
「あぁ、真逆になんで。」

奴等は厄介やからさっさと手をきれ。



シャーペンをぐるぐると回せば親指を滑りまた手元に戻ってくる。手をきれ、か。そう簡単に言うが一度契約をしてしまっている。そんなすぐに解消出来るだろうか。昼の精市はおとなしいから分かってくれるかもしれないが実際昨日一方的な契約をしたのは夜のあいつだ。

『…無理じゃん。』
「何が無理なのー?」
『うぇっ!?』
「あはは橙梨面白いCー。」
『いきなり話しかけて来ないでよ。』
「Aー、だってもう昼休みだよ?」

慈郎に言われ時計を確認すると授業はとっくに終わっていた。慈郎曰く授業が終わったのにシャーペン片手にノートを開いて悶々としている私がおかしかったらしい。いつもは机につっぷつして寝ているからだろう。それに関しては慈郎も変わらない。

ただ話していただけなのに一瞬慈郎の肩が跳ねて笑っていた顔が裏返したかのように真剣になった。


「…橙梨はさ、ずっと俺の側に居てくれるよね?」
『えっ何どうしたのいきなり。当たり前じゃん。』

この答えに嘘はない。

「じゃあ指切りげんまんしよー?」
『いいよ。』

いつもはしない謎の行動だが可愛いから付き合う事にする。小指を差し出すと嬉しそうに絡めて指切りげんまん嘘吐いたら針千本飲ーます、なんて笑って言った。そうしていると忍足もやって来てご飯を食べる事になる。卵焼きを取られ取り返して戯れている昼休みはあっという間に終わっていった。


嘘吐いたら針千本飲ーます、指キッタ



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