03
幸村くんからは毎日のようにメールが来る。しかもさりげない内容だから返信がしやすく気がつけば夜中までメールすることもしばしば。テニス部で疲れているし朝練もあるはずなのに一度だって自分からメールを切ったりはしなかった。私が眠くなっておやすみ、というとおやすみ。それでまた明日ねって。それが楽しくて毎日メールが来るのが待ち遠しい。自分からメールというのは恥ずかしくて出来なかった。
そんなクリスマスから2日前の朝。いつもは元気なブン太が机に突っ伏して寝ている。…あの子のとこへいかなくていいのか。自分で考えては胸が痛んだ。
「神崎ちゃん。」
『なぁに仁王くん。』
いつもは机に突っ伏して寝ている仁王くんが起きていて話しかけてきた。まるで真逆じゃないか、ただでさえ口数少ない仁王くんが話しかけて来るのもなかなかないし今日はみんな変だな。
「ブンちゃんなんで元気ないか知っとる?」
『全然。』
「神崎ちゃんには面白い話じゃが聞くか?」
『そんな風に言われたら知りたくなるし。』
ケタケタと笑う目の前の詐欺師に少しイラッときたが私が聞いて面白い話とは一体なんだろう。まさか、告白して付き合うことになったとか…?だったら私には面白くはないし第一そんな喜んでる人があんな状態にはならない。頬杖をついて教えてよ、とまた言えばいいんじゃな、と聞かれたのでファイナルアンサーと適度に答える。
「…フラれたナリ、ブンちゃん。この前から気になっとったあの子に。」
『…え。』
「なんて言ってフラれたと思う?」
『…。』
「私は神崎さんじゃないから重ねて私を好きにならないで、じゃと。つまりあの子はブンちゃんがまだ神崎ちゃんを好きだと思っとる。」
『何それ…、私フラれたのに…。』
「知っとるか?最近のブンちゃん。」
神崎ちゃんばっか見とるよ。
その言葉に反論することは出来なかった。最初はうぬぼれかと思ったがブン太と目が合うのが心なしか多くなった気がしたのだ。ふと顔を上げるとこっちを見てて。朝練終わりの幸村くんと話してる時も後ろで悲しそうな目をしていた。あの時はフったブン太があんな顔しないで、なんて思ったけど今確信した。
まだお互い未練たらたらなんだ。
「…今ならより戻せるんじゃなか?お前さん達こんなとこで終わる仲じゃなかろ?」
私たちの時間はあの日で止まったまま。
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