05

"明日、駅前の19時噴水のとこで待ってるから"

昨日別れ際言われたブン太からの言葉。でも今日は幸村くんとの約束もある。さっき連絡がきて19時に駅の裏口に集合になった。時間が重なった以上必然的に私はどちらかを選ばなくてはならない。

『…分らないよ。』

ブン太の事はまだ好き。でも素直に寄り戻そうと言われても嬉しいとはあまり思えなかった。幸村くんは…、どうなんだろう。たった一週間だけど私にとってとても濃い一週間で楽しかったのは事実、それに恋愛感情は存在するかは分らない。










そうこうしているうちに19時になる。あれから数時間で色々考えて私は場所に向かった。後悔をしないように…。


『…待った?』
「いや、今来たとこ。」
『そっか、よかった。』
「来てくれたって事は期待してもいいのかよぃ?」

少しだけど笑いながらブン太はいう。私は駅前の噴水に来た。見慣れた赤髪はもうそこにいて遅れたかと思ったが正面の時計は19時5分前。唐突に言われて驚いたが今日はこれを伝えるために来たんだ。自分の気持ちをはっきり言わないと。



『…ごめんね。よりは戻せそうにない。』
「…そっか、何となく分ってたぜぃ。」
『あの時は言えなかったけど今までありがとう…!』
「おぅ、俺はまだ好きでいるから。…幸村くんとうまくいくといいな!ほらっ!いけよ!」

ぐっと背中を押した手は少し震えていて振り向きたくなったけどここで振り向いたらまたブン太のところに戻りたくなってしまうから振り返らずただ前に進んだ。振り切るように走りながら。きっとあの日の彼もこんな気持ちだったんだ。私だけが辛かったんじゃない、別れを言う方も同じぐらい辛いんだね。

裏口へ着いた頃にはとっくに待ち合わせた時間を過ぎていて周りには幸せそうなカップルばかり。綺麗なウェーブがかった青髪を探すが見当たらない。一周してもそれらしい人物はいなかった。

『帰っちゃったよね…、待ち合わせ遅れたんだもん…。』

これ以上探しても無駄と考えてその場所を去ろうと振り返った。

「…遅いよ。」
『幸村くん…。』

そこにいたのは怒ったような拗ねたような声で呟く私がずっと探していた人。

「遅刻、後でペナルティ与えなきゃなぁ。」
『う、それは嫌だけど…、遅れてごめんなさい…。』
「嘘だよ、何で遅れたかはもう知ってるからいわなくていい。」
『え…。』
「来てくれただけで俺は嬉しいから。」

さっきの表情とは打って変わった笑顔で彼は言った。

『…待っててくれる気がしたの、ずっとずっと。だから私はブン太にちゃんと気持ちを伝えられた…!ありがとう。』
「…待ってる、か。俺短気だよ?待ってるなんて嫌。…歩きながら話そう、手、出して。」

ゆっくりと手を繋いで歩き出す。優しく包み込むように私の冷えた手を温かい手で覆われた。

「冷た…!薄着で来るからだよ全く…。」
『寒いからだもん!』

ぎゅっとさっきよりも強く握られて何か話そうとしていることが分ったから口を紡いだ。

「…あのさ、俺さっき言ったじゃん短気だって。利用したんだよ、丸井と別れたこと…。」

"神崎さんの弱みに漬け込んだんだ"

「2年の初めかな、1回だけ話したことがあったんだよね。ただよろしくねって言っただけなのに面白いぐらい吃って赤くなって、興味が沸いたんだ。いつも目で追ってたんだけど話しかけようとすると逃げちゃうし…。」
『…男子苦手で…。』
「柳のデータで知った。…でも次会った時は丸井の彼女だった。後悔したさ。何であの時嫌がられても話しかけにいかなかったんだって、そしたら多少は俺の方に気持ち傾いてたんじゃないかって。」
『じゃあ幸村くんは、私のこと、』
「うん、本気で好き。」
『私…。』
「分ってるさ、一筋縄では恋愛は上手くいかないねー…。俺も丸井も神崎さんも報われない。好きな人に名前すら呼んでもらえないんだから。」

そう言った幸村くんは悲しそうだった。私は無意識に幸村くんを傷つけていたんだ。特別って何?名前で呼ぶことで特別な存在になる?違う、私にとって名前で呼ぶ人が一人しかいなかったから勝手にそう思っていただけ、私の思い込み。意地をはって他人と干渉をしなかった、歩み寄ってくれていたのに私から突き放していた。

『…精市、くん。』
「…名前…!」
『私少しずつ変わっていきたい、それは、精市くんも一緒に…。今までの関係ではいられなくなるけどいいですか?』
「あぁ、じゃあもう一度聞くよ。」


"俺と恋する?"
"はい!"


20111225 Marry Christmas

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