『…今なんと?』 「だから俺も好きだって。」 『も?』 「も。」 おかしい、明らかにおかしい。"も"が余分なのだ。"も"という事は私が幸村くんを好きと言った? …そんなはずはない。 私は風邪で寝込んでいたし第一そんなことを言った記憶もない。あ、これ倒置法で後から「え?何言ってるの花の話だけど何?俺のこと好きだったんだ?」みたいな感じになるあれじゃね!? 『つかぬことをお聞きしますが何が好きなのでしょうか…?』 「青菜だけど。」 違ったぁぁあ!私だった!何で何これどういうこと!?頭で一行に処理出来なくておろおろしていると幸村くんが不思議そうに顔をのぞき込んでくる。 「まさかと思うけど覚えてないの?俺がお見舞いに行った日。」 『確か私が倒れて被さって…。』 「うん。」 『そっから記憶がない。』 「なにそれ一番肝心なとこ覚えてないじゃないか。いますぐ頭シェイクしてやるからさっさと思い出せよ馬鹿。」 『ちょ、痛い痛い幸村くん!』 私の頭を両手で挟み込んで振られる。こんなことされたって思い出せるはずがないのに。うぇ、気持ち悪くなってきた…。口に手を当てたら察したのか急いで手を離してやめてよね、なんていって外方を向いた。 『あの日、本当に何があったの?』 「…お前が…。」 『私が?』 「…好きっていいながらキスしてきたんだよ。」 『…嘘でしょ。』 「こんな時に嘘なんて言ってどうするんだ。でもお前あのまま寝ちゃうし…、なのに覚えてないとかさー…。」 ジロリ、そんな音が聞こえてきそうなぐらいな感じで見下して睨まれた。本当にすみませんで言い切れないぐらい謝りたい。でもどうせ幸村くんのことだし可愛い女の子とキスの一つや二つ交わしたことあるんだろう。事故なんだから言わなければよかったのに。…言ってて私が虚しくなってくる。 「で、どうやって責任とってくれるの?」 『責 任 ?』 「俺初めてだったんだけど?」 さっきまでとは一転して今度は清々しいほどの笑顔。責任…。一生近寄りません!とか?というか幸村くんのファーストキスの相手事故とはいえ私とか嬉しすぎるんだけど。絶対言わないけど。 「だからさ、責任とって俺と付き合って。」 『…私でいいの?』 「青菜がいいの。」 少しあった距離がぐんと近付きぴったりとくっついた。それはまるでパズルのような。肩に彼の顎が乗っかってそれがくすぐったくて心地よくて私たちはもう一度互いの耳に"好き"と囁くのだった。 ((神のみぞ知るキモチ)) 「熱の時にあった色気は何処にいったんだろうな。」 『さぁね。』 「また水でもぶっかけようかな。」 『まじ勘弁!』 △ back ▽ |