風邪をひきました。

…原因はきっとこの前の髪が濡れたまま帰った事。次の日は発症しなくて安心してたら見事4人に一日中追いかけられ疲れていたらしい、今日という今日に発症してしまったわけだ。この年になれば母さんもあまり心配などしてくれるはずもなく一人で大丈夫よね!なんて決め付けて仕事に行ってしまったのである。そのため昼から何一つ口にしていない。薬まで行くのも面倒。そんなに熱は出てないのだが平熱が低い私にとって熱は命取りであった。

『もう一眠りしよう…。』

こうして私は夢の世界に落ちて行った…。





額に冷たさを感じて目を覚まそうとするが力が入らず薄目程度しか開けられない。柳、ほんとにあんたいつも目見えてんの?私今全く見えてないんだけど。誰かが私の看病をしてくれている、らしい。

「起きたの?」
『…うん。』
「薬は?」
『飲んでない…。』
「俺が誰かわかる?」

失礼ではあるが半目程度しか開いておらず首から上がギリギリ見えない。立海の制服だから私の知り合いだとは思う。でも私の周りの人にこんな看病までしてくれる人いるとは思えない。ブンちゃんや雅治や切原くんは反って騒いでいく気がするし柳や真田や柳生はうつるから来ないだろう。ジャッカル…はそんな仲良くないし。

『幸村くんが看病とかありえないし。』
「それはしてあげている人に言うセリフなのかい?」
『…えぇぇほんとに幸村くん…?』
「お前の目は節穴?」
『ごめん、今あんまり見えてなくて…。』
「…そう。」

寝ている最中に汗をかいたのか頬や首を蒸しタオルで拭ってくれた。

「かなり汗をかいているようだけど着替える?」
『ん…。』
「着替えどこにあるか教えて。」
『…ダメ!ほら、下着、とかあるからダメ、自分で行く…。』

ベッドの縁に手をついて立ち上がろうと力を込めた。が、予想以上に熱の脅威は恐ろしいらしくて前のめりに倒れる。

「っぶない!」
『…あ。』

倒れて床とキスしそうになったところを幸村くんに支えられそのまま私を抱え込むようにして前に倒れた。簡単にいえば私が幸村くんを押し倒している形になっている。慌てて退こうとするが抱き締められているしただでさえ風邪の私が拒絶出来るわけもない。幸村くんの鼓動が聞こえるくらい密着していて赤い顔が更に赤くなるのを感じた。


「馬鹿、そんな体で立てるはずがないだろ。」
『…ごめんなさい。』
「そんなに俺は頼りない…?」
『え?』
「熱とかそんな関係なくもっと頼って欲しい、俺じゃダメなの?」


またあの儚さそうな笑顔ー…。

それからの事は私はよく覚えていない。あの日幸村くんとあの後どうなったのかとか。いつ帰ったんだろうとか。またあの眠気に落ちていってしまったのであるー…。


((お前に届け))


「…寝ちゃった。」


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