『いだぁぁぁああ!』
「ちょっとは静かに出来ないの?」
首押さえて顔を水道水に突っ込むとか怪我人にする事じゃない!』
「仕方ないじゃないか顔に傷作ったんだし…。」
『普通は濡れタオルとかさぁ…!』

ようやく頭を押さえる手を退かして貰えばご丁寧に髪まで水に浸かっていた。ロングではないため大惨事にはならなかったが髪の半分以上が濡れており顔をあげると肩やら制服やらについて濡れるからあれ?あの子プール入ったの?状態になっている。タオルを持っていないため乾かしも出来ず今日みたいな風の強い日には風邪をひいてしまいそう。

「絆創膏は?」
『あー…これ。』
「貸して、貼ってあげる。」
『いいよ、何されるか分からないし。』
俺の言う事が聞けないの?
『いやいや、そういう訳では…くしゅん!』
「風邪うつすなよ。」
『こんな状態なんだから仕方ないで…くしゅん!…しょ。』
「…着とけば。」

肩に羽織っていた立海テニス部のジャージを私に被せてそう言った。これ濡れたら怒られるんじゃないか…?しかも襟のところに血がついて取れなかったらと思うと悍ましくて着れたものじゃない。

『いいよ柳とかジャッカルに借りるから!』
「着ればいいと言ってるだろ?それとも俺のジャージじゃ不備があるとでもいいたいの?」
『ないけど…。』
「じゃあさっさと着なよ見苦しい。」

ジッパーを一番上まで上げられて立ててある襟にちょうど傷があるところが擦れた。それを幸村くんは分かってるはずなのにわざわざ襟を少しだけおって優しく絆創膏を貼ってくれる。


「…これでいいか。」
『え、今私どんな感じ?』
「(何この小動物…、袖から指覗いてるし。)いつもの2割増しぐらいダサい。」
『なんだと!乙女に向かってそれはないでしょ!』
乙女?どこどこ?
『ここ!』

きょろきょろと意地悪そうな顔をして探すものだから何とか目線を合わせるべく飛んだ。氷帝のミソっ子のごとく。それでも気付かないふりをされたから余計高く飛んだりしたけれど体力の限界。座り込んで息を吐いたり吸ったりする。明日筋肉痛になったらどうしよう、明日はあの4人復活してくるだろうから全力で逃げなければならないのに。

「今からロードワーク行くけど一緒に鍛える?」
『ご遠慮します。』
「…早く帰って髪乾かすんだよもやしっ子。」

そう言って撫でる幸村くんの手は温かかった。


((俺の下僕がこんなに可愛いわけがない))


「柳ー、だぼだぼジャージってアリだと思わない?」
「あのちんちくりんなら小さいしアリなんじゃないか?」
「別に青菜の事じゃないし何言ってんの。」
「…はぁ。」


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