「もう暗くなって来たし引き上げようか。」 「そうですね、明日も朝練ありますし。」 「…丸井と仁王はどうする。」 「もう寝てるから真田に任せよう。」 『寝かせたの間違いじゃないの。』 夕食時、2人が戻って来ることはなく切原くんも空気を読み静かだったため最後の晩餐のようで居心地が悪かった。こんな黙々と食べたのは多分初めてじゃないだろうか。片付けは魔王の命令で私と柳生。紳士の柳生が舌打ちしてたのが幸村くんに聞こえ箸が壁に刺さったが真田は何も言わなかった。日常茶飯時かもしれない。 …なんやかんやで「省き過ぎだよ。」…すみません、帰ることになりました。 「謝っても省いてんじゃん。」 『スルーしてよ!ぶっちゃけこの小説時間経つの遅いからさっさと進ませないと色々めんどくさいんだよ!』 「作者の気持ちを表に出すな。」 『てへぺろっ!』 「殴りますよ。」 柳生の目は笑っていない。危機を感じた私は柳の後ろにサッと隠れる。 「…帰った方がいい、柳生の素が出る確率100%。」 『もうすでに出てると思うんですが。』 柳の後ろから顔を出していうと柳生の隣りにいたはずの幸村くんがいない。 「じゃあ俺こいつと帰るよ。」 あだだだだ、頭鷲掴みとかありえねーな、ありえねーよ。しかも私と幸村くん帰る方向真逆だった気がするんだけど気のせいかな。ブンちゃんとジャッカルは家近いんだけど。 「送ってやるってことぐらい気付けよ馬鹿青菜。」 『そんな罵られて帰りたくない。』 「…さっさとしなよ、ありがとう真田、お邪魔しました。」 『引っ張るな!あ、引っ張らないでください!』 無理やり手を掴まれて引きずられろくに靴も吐かせて貰えないまま外に出される。摺り足に歩くものだから余計躓きやすいし歩きにくい。それに相変わらず手をつないだままだから踏んだ踵を直せない。 『幸村くん、靴履きたい。』 「ふーん。」 『だから手を離して。』 「やだよ。」 『わがまま。』 「そうだね。」 一瞬だけどふだんとは違う少し儚さそうな笑顔で幸村くんは答えた。街頭だけだからはっきりとは見えなかったけど。 「…柳、柳ならこうやって手を繋いでてもいいの?」 『…なんで柳?』 「…変なこと聞いてごめん。ばいばい。」 さっきまで強く、所詮恋人繋ぎという指の間まで握られていた手がゆっくり離れていったのが寂しいとか思ったのは何故だろう。 見ればそこは家の前でちゃんと送ってはくれていて。帰る方向はやっぱり元来た道を辿っている。 『幸村くんの馬鹿。』 いつもなら馬鹿なんて許されない言葉なのに夜空に消えていった… ((馬鹿と夜道と黒魔術)) △ back ▽ |