朝から憂鬱だ。何が好きで生徒手帳なんか届けなあかんのや。あ゙ー!白石王子(二次元)にフラれたのもあのピアスのせいだ、絶対そうだ。

「何をさっきからブツブツ言っとんねんきっしょ。」
『あ、昨日のピアス。』

後ろから話しかけてきたのは昨日のピアスだ。丁度いいや、ついでに渡してしまおう。ってかキモいって何や、こんなでも私女やで!

「誰がピアスや。」
5個もピアス着けてピアス野郎と言われん方が珍しいっちゅー話や。』
「なんで謙也くん。」
『何となく。』

私たちの隣りを通り抜ける人達はみんな振り返って2度見する。そんなに珍しいか私がこのピアスに近付いとんのが。私みたいな優等生(キャラ)が一緒にいるのは確かにおかしいか。ポケットに手を突っ込んで四角いものがあったから引っ張り出した。昨日拾ってポケットに入れたままだから多分これだ。

「あんた何、初対面の奴への挨拶でアニメ〇トカード出すんか。」

手に握ったそれは生徒手帳なんてものではなく、青い薄っぺらい(ポイントは厚いで!)カードだった。私もう死にたい。ノーマルの人間の前でアニメ〇トカードを出すなんて何たる失態。

例えるならば全裸なのに靴下だけはいてカバディする並の恥ずかしさだ。

「これくれるん?ラッキー、ありがたく頂いとくわ。」
『あげる訳ないやろ、間違えただけや。』

白石王子シリーズで貯め込んだ私のポイントをタダで譲ってやるものか!もう一度ポケットを探って同じような薄い冊子を取り出した。

『これ、あんたのやろ。』
「…中身見た?」
『しゃーない、誰のか確認したんやから。』
「せやな、…ありがとう。」

どういたしまして、軽く言って去ろうとしたら腕を掴まれた。まだ何かあるんかピアスよ。

「で、どうする。」
『は?』
「あんたがメ〇トカードでもたもたしとるうちにチャイム鳴ったんやけど。」
『嘘やろ!?』
「騒ぐなや、…屋上どうや。」

勧めてきたという事はwithピアスということだ。え、めっさ気まずくないか。知り合って数分の男女が一緒に一時間サボるってラブイベントじゃなくてただの拷問や。ただし私は三次元に興味はないけど。とは言ってもいつまでもここにいる訳にはいかないので着いて行く事にした。

『でも屋上開いてない気がする。』
「その辺は心配ないわ、合鍵持っとる。」
『あ、絶対将来ストーカーですね分かります。』
「ちゃうわ。」

本当に合鍵で簡単に開いたので私は引いた。に比べピアス君はドアの向こう側に歩いて行く。私もそれに続きドアを閉めて歩き出した。屋上の中央辺りで急に立ち止まるから私もつられて立ち止まる。

「…茜さん。」
『えっうぇっ、はい。』
「何でそんな驚いてはるん?」
『いきなり名前呼ぶから…。』

「…俺、わざと落としたんですわ。」
『?』
「やっと会えた、茜空P。」

そう言って一気に距離を詰められ抱き締められた。






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