担ぎ込まれること数分前、イケメン兄ちゃんは誰かと通話を始めた。時々聞こえてくるのは部活に行く途中で女をひいちまった、など私に関しての内容。私そんなにダメージないし大丈夫なんだけどなぁ。通話を終えたのか最新スマートフォン片手にイケメンは話し掛けてきた。

「意識はあるか?」
『ばっちり、というかいますぐ降ろして欲しい、連れに殺される。』
「…その連れという奴はたった今俺が危険だと判断したためこのまま専門医に診せることが決定した。」
『うそうそうそ!超いい人!だから降ろして!』
「お前自分の格好を見てそういう事を言え。」


イケメンに言われ自分の服を確認する。…青学の制服って赤だったっけ?あとさっきから肩に垂れてくる水は何?高級車だけに車内にシャワーでもついてるの?恐る恐る頭に触れて軽く擦り自分の目の前に持ってくる。

何じゃあこりゃあ!
「血だな。」
『うそっまじでか…。え…、嘘だろ…。』
「落ち着け、大丈夫だお前はきっと助かる!安心しろ、跡部財閥にまかせるんだ!」
『いくらイケメンでも自分をひいた奴信用出来るか!』
よろしい、ならば。」
戦争だ。…って違う!』

イケメンはどうやら悪ふざけがお好きらしい。目の前に見えてきたのは跡部総合病院。綺麗で清潔感ある広そうな病院、だがしかし。

『…何アレ。』
「フッ…早くも気付いたか…。あれは純金で作られた等身大の俺だ。」
『激しく病院にいらない!』
「まぁ遠回りにいうと俺を見て元気出せってことだな。」
『全く遠回りじゃないし出せる元気も出せないわ!』

そのまま病院の入口まで車で入り車から降りれば横一列に並んだ医者や看護師が一斉に頭を下げる。何やらイケメンが医師達と会話している時車椅子に乗った少年がこっちをジッと見ているのに気がついた私は寄って行ってみる。この格好だと嫌がられるかな。

『私の事見てた?』
「うん、随分面白そうな格好してると思ってね。」
『これが面白そうに見えます?』
「俺には、ね?」

少年は私と同じ歳でお花が好きらしく今も検査から抜け出し植えられた花を見ていたのだそうだ。あとあの跡部像はセンスがないと豪語していた。

「…君は跡部の恋人?」
『まさか!他人ですよ、強いて言うなら私がひかれた側、彼がひいた側。』
「なんだ、ただの事故の被害者だったんだね。」
『なんだろうすごく"ただの"が重い。』
「あ、来たみたいだ。じゃあ俺はこれで、あいつの顔は見たくないし。また、ね?」
『うん、またね!』

車椅子の少年はイケメンと逆方向に行ってしまった。少ししか話してないけどちょっと黒属性なのは分かった。また会えるといいな、なんて思ってたり。

「おい!何処行ったかと思えばこんなところにいたのか…。血まみれで動きやがって…!」
『もしかして…。』

心配してくれたのだろうか。それなら申し訳ない事をした。顔を上げ謝ろうと口を開く。


そんなに俺様の像が見たかったのか…!
『…はい!?』
「後から像はいくらでも見せてやる!治療室にいくぞ。」

上機嫌なイケメン俺様に手をひかれて再び病院の前で医師の洗礼を受けながら中に入った。ははは、開いた口が塞がらない。






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