「なんでこんなに遅いの?」
『いやぁ…、事故?』
「無傷だけど?」

やっと不二家についたと思ったらまず玄関で説教が始まった。インターフォンを押してどうぞと言われ入ったら仁王立ちで立って開眼して見下ろしてるなんて聞いてないぞ私は。靴を脱いだら玄関に正座させられる始末。壁に隠れて裕太くんがちらちら見てた。青ざめてたからきっと私にフォローはしてくれないよね、相手兄ちゃん…、いや、人間じゃ醸し出せないオーラ出してるし。

「やだなぁ、僕人間なんだけど?」
『はい不二様は人間です!』
周助様だろ?
『えっ?』
「言えないの?言わせてあげようか。」

どんどん事態の収集が着かなくなっている。不二の笑みが尋常じゃなく怖い。私と視線の高さを合わせるようにしゃがみ込むと言葉とは裏腹に優しく手が頬を包んだ。


「…何で男を家に泊めたりなんかしたの。」
『不可抗力、鍵がなくて家に入れなかったところを拾っただけだよ。』
「男はみんな狼なんだからいつ襲われてもおかしくないんだよ?茜みたいなちんちくりんでも危ないんだよ?」
『サラッと言うなサラッと、あのヘタレには無理だってば。』
「僕だってこんなことぐらいは軽く出来るんだから。」

触れていた手とは逆の頬にキスを落とし先ほどとは違い耳に囁くように話す。…あーあ、壁の向こうの裕太くん顔真っ赤にしてるし。私は乙ゲーで免疫着いてるから大丈夫だけどな!

「変な免疫着けるな少しは照れろよ。」

またあの嫌な笑みに戻りでこピンを繰り出して来た。それも本気、痕が着くんじゃないかってぐらいの力で。



「さぁ前置きはこれぐらいにして…。」
『前置き!?正座の意味は!?』
「何言ってるのこれからに決まってるじゃないか。祐太ー、アレ持って来てよ。」
「…ほんとにやるのかよ兄貴…。」
「何か言ったかい?」
「何でもねぇよ…、頑張れよ茜ちゃん。」
『えっ?えっ?』

祐太くんはここで用無しなのかリビングに引っ込んでしまった。それに気にもとめず不二は裕太くんから受け取った小さいものを床に置きずいっと私の前に差し出した。1から9の数字が書かれたなんの変哲もないルーレット。これをどうしろと言うのか。

「チャンスは1回、さ、回して?回して出た数のお仕置を始めるから。」
『セーフは?』
「そんなのある訳ないじゃないか、強いて言うなら1のデートかな。」
『すみません勘弁してください!不二と歩くとみんなの視線で死んじゃうよ!』
「今更遅いって早く回しな、回さないなら僕が勝手に決めるけど…それっ!」
『あああぁぁぁ!』





「…7か…。」
『7って何なの?』
「明日になれば分かるよ。」



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