『なんで私が茜空P?私は普通の人間だよ、二次元好きな。』
「普通ちゃうで。だっていつも言ってましたやん。」

王子みたいで絶頂絶頂言ってるテニス部部長や名前のセンスがアレなヒヨコとお坊さんとガチホモが居る学校なんて。

『…。』
「それに一昨日茜さん遅くまで学校残って教室で作詞しとった。集中してて俺には気付いてへんかったけど。」

「だから昨日確かめるべく生徒手帳をわざと落としたんですわ。わざわざミクの画像を挟むという失態をして。」
『でも何でそんなに私のこと知ってるんや…?』

抱き締めたままの状態でピアス君は肩にかけてあるヘッドホンを片手で器用に外して私の耳にかけた。私の好きなドラムが走りギターが追いかける激しい曲。流れてきた歌詞は前に私があの人とのチャットで合作を作ろうと思って書いたもの。驚いて顔をばっと上げるとピアス君の顎にクリーンヒットした。

「痛っ…。」
『ごめん、えっと曲つけてくれてありがとう。ぜんざいP。』
「当たり前っスわ。気付くの遅過ぎやっちゅーねん。」
『えへへ。』

そう言ってまた私の肩に顔を埋めた。

『…私、まだぜんざいPの名前を知らん。』
「財前光。」
『そんで光くんは何で抱き締めとるん?』
「…別に好きで抱き締めとる訳やないし!」
『誰も好きとは言っとらんで?』
「…ニヤニヤすなや…!」

まさかの失言で光くんは顔を真っ赤にしたと思ったら片腕で口元を隠して見んといて、と呟いた。何なのこの可愛い生物!いつもはあんなに毒舌なのに実際はこんなに可愛い中学生の男の子だったとは。私も光くん大好きだけどね(同士的な意味で)。曲が終わりヘッドフォンを外して返す。

『私の歌詞が化けたなぁ、光くんこういう激しい曲好きだったっけ?』
「…茜さんの好みに合わせた。」
『嬉しいわ、てかデレ過ぎ。』
「やっと会えたんですもん、憧れやったし。」
『私が?』
「茜空Pの曲聞いて俺もボカロPになりたいと思ったんスわ。」
『やめ、照れる。』
「おあいこ。」

離れてから私たちは給水塔を背もたれに肩を並べて座った。光くんはスカートが汚れるとか言っていたけど構わず座る。はらったら多分綺麗だし。

「寝たいから肩借りてええ?」
『おん、低いけどどうぞ。』
「いい香りするー…おやすみなさい。」
『おやすみ。』


…堪えるのは結構大変やなぁ。だって美形だしまつげ長いし髪の毛柔らかいしで…、一番は白石王子やで!?越えられない壁があるからネ!

『浮気ものの私を許してマイダーリン…!』
「へぇ、自分浮気しとるん?いいんか彼氏の隣りでそないな事言うて。」
『彼氏じゃなくて同士…って誰?』

だれかがいる事は分かったが逆行で顔が見えない。背が高いし声的に男子だとうっすら分かる程度。

「んんーっ、エクスタシー!」
白石王子!
「王子!?」

立っていた状態からしゃがんで私と同じ目線になってくれたからようやく顔が把握出来た。…口癖?で顔見る前に分かってしまったけど。本当に残念な王子だな。というかいつの間にか入ってきたんだ?怖い、四天宝寺Rはストーカー予備軍ばっかりだ!

「それにしても無駄のない動きやった…!自分全然気付かんかったもんな。」
『人はそれを泥棒という。』
「まさに泥棒の聖書やな!」
『泥棒に聖書って最悪の組み合わせですけど!?』




『リアル白石王子はアホの子やったんか…。』



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