連れて来られたお寿司屋さんはどうやら青学御用達かつ河村くんとやらの家の店らしい。跡部はあの後不二に無言の圧力をかけられながら帰っていった。可哀想に。まだ聞きたい事は山程あったから一緒に食べたかった。

「何ぼーっと立ってるの?さっさと入りなよ邪魔だから。」
『はーい。』

店内には男性客、それも私たちぐらいの若そうな人が2人いた。何やら口論している様子。黒髪の人の足下には紙袋がある。

「あっれー?おチビはー?」
「ここにいるっスよ菊丸先輩。」
「小さ過ぎて見えなかったにゃー!」
「…テニスは俺の方が上手いっスけど!」
「言ったなー!」
「英二に越前、俺たちだけじゃないんだから静かにしよう。」

戯れ出した2人に大石くんが終止符を打った。流石にこちらの喧しさに煩わしくなったか客が首だけこちらに向ける。

「いやいや五月蠅いの慣れてるんでー…って青学!?しかも美空!」
「茜さん…!」
『光くんに忍足なんでいるの!?』

振り返った客は四天宝寺の顔見知りだった。やばい、青学の制服について何か言われそうな予感が。青学の彼らも寄ってくる。

「俺は財前に付き合わされたんや…、あんなイベントありえへん!」
「謙也さんスピードスターとか言うから連れて来たんに逆に足手まといでしたわ。」
『イベント…、あ…!』

不二のせいですっかり忘れていたが今日はオタクの祭典コミケというものがあって知り合いの歌い手さんとも会おうよー、なんて約束していたのだった。慌てて携帯を取り出して電源を連打するも事故のダメージか応答がない。

「というかなんでそない怪我だらけやねん。」
『高級車にひかれた。』
「うせやん!」
傷物になってしもたんで俺が嫁に貰ったります。」
『それ傷つけた人がいうセリフなんだけど嬉しいからありだお。』
キモいよ茜、全然可愛くない。」

不二が私の左肩を壊さんばかりに掴み会話に入って来た。笑ってるけど笑ってない。青学のみんなは私たちをスルーで寿司を食べてるけど菊丸くんはニヤニヤしている、ニヤニヤする要素なんてないと思うのだけど。

『一々うるさいよ不二は。』
「へぇ…、そんな口聞いていいんだ。」
『…今のは空耳。』
「しっかり聞こえたよ。その口塞いであげようか?あぁ、財前くんだっけ。茜の旦那になれるのは僕ぐらいだから諦めた方がいいよ。」

そう言って不二はドヤ顔でキめて私の頬にキスを落とした。状況についていけず混乱していると光くんは上等っスわ、とこちらもドヤ顔でキめて反対側にキスを落とす。赤面する私と何故か同じく赤面している忍足。


「ま、名字でしか呼んで貰えない不二さんよりはリードっちゅー事で。」
「はは、茜は何で東京にいるか分かる?僕に会いに来たんだよ。」
『それは脅迫…。』
「え?」





「そういえば忍足、茜の家に泊まったんだって…?」
「え。」
「乾、忍足が乾汁飲みたいって。」
「言うてへんで俺は!」



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