テニス | ナノ

 不二と幸村が玉砕

テニスの大会に桜乃の誘いでドタキャンした友達の代わりに付き添う事になって。テニスのルールなんてまったく分からない私を誘うのもどうかと思ったけれど、いつも良くしてくれている桜乃のお願いを断る事なんて出来なかった。恋する桜乃を見てると少しだけ嬉しい。叶ってほしいと思う。まぁ越前くんのよさは分からないというのは隣を歩く本人には絶対言えないが。

「南ちゃん!あ!リョーマくんだ!」
『話して来なよ。』
「え、でも…。」
『うじうじしてると取られちゃうぞー。』

ちょっと脅かしてやれば赤くなったり青くなったりして可愛い。私もこんな女の子らしい女の子だったらなぁ。自販機でジュースを買っている越前くんのそばに駆けていった桜乃の背中を見送って、近くのベンチに腰掛ける。うう、寒い。カイロを持ってこればよかった。こんな中テニス部員は半そでの人もいるしスポーツマンって何で寒さを感じないんだろうか。いくら運動をしたって寒いものは寒いのに。

「隣、いいかな?」

突然話しかけてきたのは見た事もない学校のジャージを来た女の子。マネージャーさん、かな。でもヘアバンドをしているから大会に出るのかもしれない。今日の試合って女子の大会もあったんだっけ。桜乃そんな事言ってなかったよなぁ、なんて考えながら生返事でいいですよと返した。

『大会出るんですか?』
「いや、今日は出ないんだ。偵察に、ね。…おかしいな、ボウヤがいない。」
『そうなんですか。ボウヤ?』
「越前リョーマっていう…。あ、君一緒の学校だから知ってるよね。」

私青学通ってるなんて口に出した覚えはない。それが顔に出ていたのか、制服を見たらすぐに分かるよと笑いながら言われ納得した。この人よく見ている。それから話すこともなくなって、始まった試合に目を向けた。規則的な音の中に断末魔などが聞こえるのは何故だろうな。寒さからマフラーに顔をうずめているとまたもや私にしゃべりかける声があった。

「久しぶりだね。」
『うわぁ不二先輩。』

一番苦手な先輩が隣にいた。私が1年の時3年だったから今年は高等部で会わないと思っていたのにまさかの出会いだ。先輩は越前くんを可愛がっていたから顔を出したのだろう。来ると分かっていたらこんな目に付くベンチに座らず隅っこで体操座りをしていたのに。

「そんな露骨に嫌な顔しなくても、なんで大会なんて見に来てるの?」
『桜乃の付き添いで。』
「相変わらずテニスには興味ないんだ。何回か誘ったのに一度もこなかったし。」
『だって不二先輩苦手だったんですもん。』
「2年生になったら言うようになったね南?あれ、幸村?来てたんだ。」

先輩が話しかけたのは私の隣に座っている人。もしかして彼女だったり。でも先輩は無駄に丁寧だから女の子には基本苗字にさん付けだった。彼女だったら名前で呼んでいるはずだしもしかして男の人、なのか。

「ふふ、最初から気づいてたよね。何か意図的なものを感じたんだけど。」
「何言ってるのか分からないよ、可愛い後輩が目の前にいたらそっち優先するのは当然だよね。はっきり言って君とはそんなに接点ないし。」
「可愛い後輩?彼女がかい?そういう目で見てるようにしか見えないな。」
「そういう幸村だってさっき話しかけたりなんかしてにやけてるし越前でも見てなよ。」
「うるさいよ不二。」
「うるさいよ幸村。」
『うるさいです先輩たち。』

なんなんだこの人たちは。不二先輩にいたっては私と幸村さんの間に割り込んで座って来たから狭いし寄ってくる。逃げすぎてもう三分の一ほどしかちゃんと座れていない。さりげなく手を握ってくるのをやめてほしい。多分逃げないように掴んでいるのだろうけれど不二先輩の手が冷たすぎて体温が奪われる。離そうとしても力を入れてくるだけで引っ張ってみても効果はなかった。そのうちに桜乃も戻ってきて私を見ると顔を赤くしてお邪魔しましたと言って去っていった。こんなときだけ空気が読めるスキルを発揮するのは勘弁だ。

「南ちゃんの好きなタイプは?」
『どうしてそんな話になったんですか。』
「成り行きだよ。」
『…やさしくてちゃんと話を聞いてくれる人です。少なくとも先輩たちはありえないので、それじゃ。』

眼を開眼させている不二先輩の隙をついて手を振り解き全力疾走をしたその後私はストーカー被害に悩まされるのだった。



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