「お前俺に妬いたりしないの？」
『や、別に。女子に人気があるのなんて付き合う前から重々承知だし。』
「ふぅん。」

聞いて来てふぅん、ってなんだ。分かりきっていることじゃないか。わざわざ聞くなんて愚問である。当の本人は机に肩肘を着いてパックにストローをさしレモンティーを飲んでいる。一口欲しいなぁ。私も銀紙に包まれたチョコレートを口に放り込んだ。

「そのチョコ美味しい？」
『美味しいよ。』
「一個ちょうだい。」
『その代わりレモンティー飲ませて。』
「いいよ。」

物々交換だねー、なんて言ってストローを咥える。咥えた瞬間幸村は片方の口の端を吊り上げる。吸うとなおさら目も笑い出した。私何かしたかな、あ、ちょっと甘いけど美味しい。

「間接キスだね。」
『え。』

慌ててストローから口を離した。それが気に入らなかったのか幸村は眉を寄せる。

「今更だろ、間接じゃないキスしてるんだし。」
『それとは違うし。』
「口移しがよかった？」
『ここ教室です。』
「残念。」

本当に残念そうにしている顔を見ると吃って困っていたら口移しされてたんじゃないかと思う。私たちが付き合っていることは知られていてもファンの子には認められていないはずだ。だから見られたりしたら次の日私の靴はなさそう。

「このチョコ美味しい。もう一個貰える？」

銀紙についたしわが伸ばされた紙をちらつかせながら言われる。この癖私と同じだ。私もよく食べ終わり残った銀紙を伸ばしたりする。

『しょうがないなぁ、丸井みたいになるよ。』
「そんなチョコの一個や二個じゃならないよ。」
『もう一つ、もう一つがデブの元。』
「それ丸井に聞かせてやろ。」

バッグの中から残り一個になったチョコのパッケージを取り出し幸村の眼下で残り一個ですアピールをしたが無駄だった。ありがとうとほほ笑み銀紙に包まれた大事な食料を持って行ってしまった。普通は遠慮をするが神の子に遠慮という言葉は通用しない。

「俺のレモンティー飲んでいいよ、チョコ貰ったし。」
『…欲しいけどまた間接キスじゃん。』
「そういうのは気にする癖に。」
『妬く妬かないの話？』
「ま、今はどうでもいいや。」


結局なんなんだよ幸村は。




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