「馬鹿なんですか」

怪訝そうにこちらを見て毒を吐くあいつは、信じられないかもしれないが、私の彼氏である。それも年下の。
「えー……でもほら、可愛くない?」
この日のためにと新しく買ったワンピースをつまむ。可愛く見られたくていつもは買わないレースのついたものを着たっていうのにこの反応である。まあ、こんな態度はいつものことだから慣れてしまっているけれど。
「この真冬にそんな薄着でうろつくアホがどこにいるかって言ってんですよ」
…慣れたってだけで、悲しくない訳じゃない。ユキのばか。馬鹿かアホかどっちかにしてよばか。
「もういい、帰る」
「はぁ?アンタがケーキ食べたいっつったんでしょうが!」
「新開と荒北と食べに行くからいい!ユキなんか知らない!ばーか!!」
「なっ……」
そうだ、これは明らかにユキが悪い。私悪くない。帰ったらやけペプシして、ウサ吉撫で回して、アブに癒されよう。そうしよう。
「待てって!」
「馬鹿ですいませんね!」
「何怒って…」
「何って、似合ってないんでしょ、この服!せっかくユキが好きだって言ってたお店行って買ったのに!」
「へ、」
「もういいよ、これ。巻島くんに送る。巻島くんなら着こなしてくれる!」
「いやいやいや」
心なしか赤い顔でユキが私を止める。
「とりあえず巻島さんに送るのはやめろ」
「何で!」
「可愛いからだよ!馬鹿!そんで露出しすぎ!そういうのは俺の部屋だけにしとけ!」
今度は私が赤面する番だった。


 
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