「違う! 違う!」

「なにが違うって言うのよ!」
「だから浮気とかそういうのじゃねぇって!」
「私以外のオンナとヤったんでしょ? それのどこが浮気じゃないのよ! 立派な浮気じゃん! 別れる!」

 声を荒げる名前は、すごく興奮している。
 確かに、オレは名前というカノジョがいながら、他のオンナとそういうことをした。でも、浮気ではない。
 そもそも『浮気』という言葉の概念は、異性交際において本命の恋人と交際関係を維持しながら、無断で他の異性と交際すること、である。ウィキペディアに載っていたぞ。
 (……まぁ、浮気の基準なんて人それぞれだ。オレは、名前がオレ以外のオトコと手を繋いだら、浮気したと腹を立てるだろう。オレはよくて、名前はダメだ。オレはオスだからな。オスっていうのは、子孫を残すために精子を相手かまわずばらまくいきものなんだ。本能的にな。そうプログラムされてるんだってよ。しかしメスは、いい子孫を作るために、精子を選んで選んで選び抜くんだ。今、名前が選んでいるのはオレだ、名前にとって、オレは優れた、イイオトコなんだ。だから、オレだけじゃねぇとダメなんだ。その理屈でいくと、な。
 でも今それを言うことにより、オレは自分勝手な人間だと思われてしまうので、黙っておこう)
 オレはそのオンナと交際をしているわけではない。オレのカノジョは名前、おめさんひとりなんだ。

「な、そういうことだ。オレは浮気なんてしてねぇ」
「は? なに開き直ってんの?」
「いや、だから開き直るもなにも、浮気じゃねぇって」

 オレは、必死に身の潔白を説明する。それでも名前は、機嫌を直してくれない。
 オレが、いくら他のオンナとデートしたって、手を繋いだって、ハグをしたって、キスをしたって、セックスをしたって、名前がオレの愛するカノジョだってことには変わりねぇんだ。
 わかってくれよ、オレには、おめさんが必要なんだぜ。

「なによ! バカ、バカ、バカ、バカ、バカ……うぅっ」
「ハァ、何回バカって言うんだよ」
「何回でも言ってやるわよ! っ、バカ!」

 名前は、ずずっ、と鼻をすする。目に浮かべた涙を親指でぬぐってやったら、やっと表情を緩めてくれた。
 あとで、コンビニでケーキでも買ってこよう。ふたりで食おう、きっと美味ぇから。


140303


 
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