「あーもうめっちゃ幸せやわ…」

今、俺の目の前でニヤニヤ気持ちの悪い笑顔を浮かべているノブは、前々から気になっとった女子、名前と念願のメアドを交換したらしい。どうして俺がそんなことを知っているのかというと、さっきからなんべんもノブからそのメールの内容を見せられている上、俺と名前が幼馴染だからだ。ノブにはそのことを言っていないから多分知らないやろうけど。名前もさっき電話で「水田くんからメアドもらった!」と嬉々とした声で何回も聞かされていたので俺的にはそろそろごめん被りたい。ノブは先程から「私のメールアドレスです。よろしくお願いします 名前」というなんとも淡白で絵文字一つない名前らしいメールを見つめてはヘラーっと笑顔を浮かべてそして顔を伏せての繰り返しだ。ええ加減鬱陶しいわ。

「うわーもうなんて返信しよ…!!」

「別に、適当でええんちゃうん」

「あーそういうとこがあかんねやヤマ!もらう側の気持ちもちゃんと考えへんとなぁ」

「あ、俺フリードリンクで」

「聞いとんのかヤマァ!!俺フリードリンクとチョコパフェで!」

店員さんは小さく苦笑いを浮かべてオーダーを承るとそそくさと店の奥へと入っていった。ほんまうっさい奴ですいませんでしたと心の中で謝っとく。「そーいうとこがあるからヤマはイケメンやのにモテへんのやぁ」とかほざいているノブに余計なお世話だと言う代わりに足を蹴ってやった。

「はよ返信してやらんと、かわいそうなんちゃうん?」

「うーせやねんけどぉ…!!え、絵文字とかつけたらキモいかな…?」

「少なくとも俺はキモい思うわ」

「ヤマと名前さんはちゃうやんかぁ!」

あーもうめんどくさ。なんやこいつめんどくさ!ええわもう勝手にしとけや…ドリンクを取りに行こうと立ち上がると横から「俺ベプシな!」という声が聞こえた。こいつ…ベプシと一緒に何か混ぜてやろうか。まあお店の人に迷惑かかるからそんなことせえへんけど。自分のメロンソーダとしゃあなし淹れてやったベプシを持って席に帰るとノブは先程までの云々はなんだったのか、すでに返信し終え携帯を閉じやってきたチョコパフェを口に運んでいた。ベプシを渡すとサンキューな!とパフェを食べながら礼を告げた。

「あ、そういやヤマさっき携帯鳴っと…あ、またきた」

なんか用事でもあんの?とベプシを飲みつつ聞いてくるノブを無視しディスプレイに映る氏名を見るとそこには「名前」と出ていた。ああ、またか…と小さくため息を吐く。ここで無視すると後々うるさそうだからノブに少し断りを入れ電話に出る。

「…もしも」

「ヤマァ!水田くんから返信もろたぁぁ!!」

「あーそれはよかったなぁ」

「ここここれって返信したほうがええんかなぁ!?ウザがられへんかな!!?」

「少なくとも俺はウザい思うなー」

「ヤマと水田くんはちゃうやろ!?」

「うんそうやねー」

なんとなくデジャヴの感じる会話を適当に広げ適当に切り終えると既にベプシを飲みきってストローをいじっていたノブが「誰から?」と聞いてくるから「中学ん時の友達」と答えるとノブは興味なさげにふーん、と言うと少し溶けかけているパフェをパクパクと食べ始めた。俺も少し喉が渇いてしまったのでメロンソーダを一口飲む。別にここでカミングアウトしてやってもええんやけど、二人がええ関係になったあとに言うたほうがノブの反応が面白そうやったから。この遠そうで近い二人の関係を一番近くで見れるなんて、こんなおもろいこと他にないやろ。


 
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