「終わらせてもいいですか」

 それは一体なんの話だ、と思った。唐突過ぎるその言葉の真意が汲み取れずに、懐疑心を込めた目で訴えかける。名前は小さく微笑むだけだった。

「終わらせようと思うのですが、どう思いますでしょうか」
「…ハァ? だから一体何を? 意味わかんねーしィ」

 ついに口を衝いて出た不満に、けれど名前は満足そうに笑った。「何だと思う? 荒北くん」質問に質問で返した電波チャンは今まで見たことが無いくらいに楽しそうだ。テンション高ぇなオイ。ンなこと聞かれたって、オレが知るわけねぇだろ。

「この問題に正解できたら、あなたは幸せな人生を約束されます」
「……宗教団体の勧誘かなんかァ? すっげー胡散臭ぇんだけど」

 しらねーよ、と適当な返事をして携帯電話の時計に目をやる。アー、そろそろ部室行かねェと東堂に煩く言われそうだ。「じゃ、オレ行くわー」と鞄を持って教室を出ようとしたところで、「待って」と名前は静止を要求してきた「しょうがないからお馬鹿な荒北くんに答えを教えてあげましょう」そう言ってくすくすと笑った電波チャンは、やっぱりテンションがいつもよりオカシイ。気持ち悪ぃなコイツ。

「荒北くんとの友人関係を、終わらせようと思うのです」
「…は?」
「いいですか?」

 小首をかしげてオレを見上げる小さな幼馴染は、一体どういうつもりなんだ。絶交だとでも言うつもりなのだろうか。いや、全く意味がわかんねーんだけど。
 その返答に考えあぐねていると、名前はまた、愉快そうに笑った。なんなんだ、コイツほんとに。普段から総じて電波は電波なんだけど、今日はちょっと、特にオカシイぞ。変なものでも食べたんじゃねーか?

「オレとの関係を終わらせて、どーすんのォ?」
「もちろん、恋人関係になるのです」

 にこりと幼い笑顔で言い切った電波チャンは、オレが唖然とするのを横目にさらに言葉を続けた。「そうすれば荒北くんは、きっと幸せな人生が歩めると思うのです。ずっとずっと」って、アァ、なんだそーゆーコトォ。

「オレさっきの質問には答えてないけど、幸せにしてくれんのォ?」
「ええ勿論。荒北くんにだけの出血大サービスなのですよ」

 宗教団体の勧誘とは、我ながらうまい例えだったなと笑いが込み上げる。途中入信も全く意に介さないらしいこんな胡散臭い宗教に入るのなんて、オレ以外に絶対いねーだろうなァ。


 
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