「なァ、どう思う?」

休み時間に隣の席の巻島くんに腕をつつかれて質問された。巻島くんの腕は異様に長くて、自分の席に座ったまま上体を動かすことなしにつつかれたので、距離感が狂う。近いんだけど、どこか遠い。

「どうって何が?」

私は身を乗り出して差し出された雑誌を覗き込んだ。ファッション誌のようだ。そこにはなんとも言えないデザインの服が、ずらり。

何も言えないでいると、彼が一言、やっぱ変?と。慌てて否定の言葉を探す。

「変じゃないよ、ただちょっと個性的、というか…」

「それを世間じゃ変って言うんショ。気ィ使わなくっていいヨ」

あらら、お見通しでした。巻島くんは、大きなため息をついてる。
嫌われたかな、大丈夫かな、顔が赤くなったり、青くなったり。

「じゃあさァ」





「名前が選んでくれヨ、洋服。いつ暇なんっショ?」


「え、えっとね!」

わたわたしながらスケジュール帳のページをめくってると、小さく笑う声が聴こえて、距離を詰められる。手帳を覗き込む彼の顔がすぐ隣に。さっきまでの微妙な距離感はもうない。巻島くんはペンを取り、何も書かれていない休日の欄を大きく赤丸で囲った。


「ここがいいっショ」


来週の日曜日、突然決まった巻島くんとの初デートです。


 
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