2.大切ナ者
「あ、双熾くんだぁっ。おはよー!」「おはようございます、竜条さん」 朝6時。まだ早い時間だけどわたしはすでに自室を出ていた。 「ちよちゃんとこ行くの?」「はい。お目覚めの時間を伺ってないので早目に待とうかと」「そっかぁ」 他愛もないやり取りをしながら歩く。わたしはこんな時間が好きだった。 「―――来た」 妖館が闇に包まれる。停電だ。 理由?そんなの分かっている。 ・・・・・・・・・・不法侵入者が来ました。 「静かに部屋まで案内して金を出しな」 「最高のセキュリティを誇るマンションて聞いてたけどスカスカだったぜ?」「………。何だ、強盗か」「な…」「しかも普通の人間の」 足跡を消して忍びよる。ちよちゃん、暗くて見えないからもう少し時間稼いで。 わたしの合図に気付いたのか、ちよちゃんは暗闇の中ニヤリと笑った。 「不運な奴だ。よりによってこの妖館に入るとは」 ちよちゃんの目が綺麗な紫色に光る。 「ここのセキュリティは対君達用ではない」 そう、ここは――― 「僕らにとっては君達の侵入など」 ちよちゃんと目を合わせ、犯人らしき人の背後に立つ。 「大した脅威ではないからな」 「よっ、よるな…!」 ドンッ わたしが刀を背後から脅しのように出した瞬間。 「参じるのが遅くなり申し訳ありません」 銃声の直後に聞き慣れた声。 「お怪我は…?」「双熾くん!」 「凜々蝶さまに銃口を向けましたね」 うわわわわわ、双熾くんの目が怖い。 わたしは犯人から離れ、ちよちゃんの前に立った。 その間に双熾くんは変化していた。 白い陰陽師のような和服、頭に生えた2つの獣耳、九本の大きな尻尾。 美しい…綺麗だ。何度見てもそう思う。 妖館の住人が段々と集まってきた。 わたしも双熾くんと並んで犯人に追い討ちをかける。 犯人が気絶してしまったあと、わたしとちよちゃん、双熾くんはまだ大浴場にいた。 わたしは犯人の始末、二人は何やら話す為に。 …双熾くんがちよちゃんの足を掴んでる時点でお話じゃないと思います。 最後はわかりあったっぽいから何があったか聞かない。 ――双熾くん、 大切なものが出来たんだね。
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