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6.うさぎと狸と


「お風呂あったかかったねー、ちよちゃん」
「そうだな…っと、携帯が――御狐神くんからメールの返信だ」
 
「…話聞いてると毎日メールしてるよね、二人」
「うっ、うるさい。しょうがないだろう、直接言えないんだから」
 
現在、午後8時ぐらい…大浴場のイスにてちよちゃんとおしゃべり中です。あたしもちよちゃんも髪が長いので乾かすのに苦労してます。
 
ガタッ
 
「?自販機の音?」
 
あたしとちよちゃんしかいない大浴場に自販機でジュースを買う音が聞こえた。
 
『!』
 
「あ、るり」
「卍里くんだーっ、お久しぶりだね!」
「竜条さん…!?」
 
ぱたぱたと面識のない金髪少年に近寄るあたしをちよちゃんが呆然と見ている。
 
「幼なじみなんだよー、カルタちゃんと一緒!」
「髏々宮さんと…?ということは同い年か」
 
それを聞くと卍里くんは一歩前に出た。
 
「俺は1号室の住人 渡狸卍里!不良だぜ!!」
 
………出ました。自己不良主張。
 
「…不良って自己申告するものなのか、随時ご親切だな。はっ、4号室の白鬼院凜々蝶です」
「卍里くん、そろそろその自己紹介やめようよ…」
 
呆れ顔のあたしと小馬鹿にしたようなちよちゃんの表情にわなわなと震える卍里くんは、いきなり変化した。
 
「お前も俺を馬鹿にしてんな…っ!俺が…豆狸だからってー!!」
 
目の前に現れたちっちゃな狸。…変化すれば可愛いのになぁ。
 
「……………………………わざわざ変化してくれたのか。本当にご親切なことだ…」
「卍里くん、せめて不良宣言したんだからその姿になるのだけはやめときゃいいのに」
「こんなナリだからって甘く見てるとケガすんぜ、俺は不……って何だその手は!!」
 
そろ…とちよちゃんが豆狸の頭に手をのばす。ちよちゃん小動物好きなのかな。
 
「ヤキ入れんぞっ、この…「女の子に乱暴な言葉使わなーい」

三人しかいなかった空間にもう1つの声が響く。
 
「ハロー☆初めましてっ、アンド、るりたん久しぶりーっ」
 
双熾くんと同じような黒いスーツに赤銅の色に付いてる黒いうさみみ。
 
「残夏くんだーっ!おひさーっ」
 
元気よく手をあげ挨拶をするあたしとしっぽを掴まれ失神中の豆狸を交互に見るちよちゃん。
 
「さてさて、初めましての人がいるから自己紹介しようかな?ボクが誰かって?ボクは夏目残夏、渡狸のSSさっ」
「え、あ、いや…」
「大丈夫だよちよちゃん、しっぽ掴まれたぐらいじゃ卍里くん死なないから」
 
わたわたするちよちゃんをよそに淡々と自己紹介を続ける残夏くん。
 
「だけど『百目』という妖怪の先祖返りであるボクはその目で見たくない物まで見えてしまう…。そういう悲しい性をも背負っているの…」
「あの」
「おっとボクの事がもっと知りたいって!?ダーメVv ちょっとミステリアスな方がそそるでしょ」
 
またまたちよちゃんの言葉を遮る。
 
「だけど君たちの事は全部知ってるよ、白鬼院凜々蝶ちゃんに竜条るりちゃんVv …るりたんは昔から知ってるけど」
「な、なんか言い方が…」
「また竜条さんの知り合いか…?」
「幼なじみだよー☆」
 
残夏くんのうさみみが可愛く揺れる。
 
「そうそうっ、幼なじみー」
 
あたしも長い髪を翻して大きく頷いた。

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