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4、5.懇親会


「るりちゃんおはよ!今日は懇親会だけど支度は済んでるかしら?」
 
ノックと共に野ばらちゃんの明るい声が聞こえる。
 
「うん!待って、今ドア開ける――」
「きゃあぁぁっ!いつもとちがったドレスのるりちゃんもメニアック!懇親会の後はお姉さんと一緒にお食事しましょうかVv」
「え、だって懇親会でいっぱい食べれるんじゃ…」
 
朝でも野ばらちゃんは野ばらちゃんだった。
 
「そうそう、あたしこれから凜々蝶ちゃんのお世話するから。先に下に降りててもらえる?」
「はーいっ」
 
懇親会、楽しみだなぁ。
 

 
「わ、食事いっぱい!」
 
カルタちゃんのお皿にはすでにたくさんの料理が。あたしもいっぱい食べよう、うん!
 
「竜条さん」
「わっ!…あ、双熾くん」
 
お皿を手にとったら急に呼ばれてびっくりしました。しかも双熾くん来てるなんて知らなかった!
 
「凜々蝶さまはどこに?」
「え、あー…あそこ。歩き回ってるけど」
 
指さした先には大人と話してずん、としゃがみこんでるちよちゃん。どどどどうしたの!?あたしは声を掛けようとちよちゃんのほうへ向かった。
 
「あんなトコでふせってるぞ」
「テストだけ良くてもね。器が小さすぎるんだよ、性格に出てるもんな」
 
なっ――!
 
「まぁ性格が酷いからな。あいつに媚びてんのはあいつの金とか家柄が目当てなのさ」
 
もう我慢できない。あたしはすぐ左にあったグラスを掴んだ。
 
バシャ…
 
「!!」
「なっ…!?なな…何をするんだ!!」
 
びしょ濡れの男たちを前にあたしはコトンと空になったグラスを置いた。
 
「すみません。あんまりにも聞くに耐えない言葉が聞こえたので」
 
あたしは冷たく言い放つ。
 
「土下座でも何でもしましょう。…前言撤回をして頂けるなら、ね。あんたたちに…何もちよちゃんのことを解ってないのにそんなかと言う権利はないから」
 
真面目で律儀で誠実で、とても繊細なちよちゃんのことを。
 
「わ、わかった。撤回してやるよ…。その代わり土下座しろ!」
「土下座する必要はない」
「ちよちゃん!」
「なんだ水までかけておいて…立派な暴力だぞ!」
「あぁ。彼女は僕の友人だ。友人の責任が取れないほど僕は堕ちていない」
「!」
 
ちよちゃんは頭からグラスをかぶった。
ばしゃ…っ
 
「これで如何かな?」
「凜々蝶さま!」
「え?君――」
 
双熾くんがちよちゃんの前に立つ。
 
「…凜々蝶さまは、ただ不器用なだけ。真面目で律儀で誠実で、そして。とてもとても繊細な方…。あなた方に凜々蝶さまの何が解っているのですか?」
 
双熾くんも同じこと考えてたんだ…。
 
ピーンポーンパーン
 
『これより懇親会を開始します。新入生代表は舞台袖に――』
 
カツン、とちよちゃんが歩きだした。
 
「ちよちゃんっ」
「凜々蝶さま…っ」
 
双熾くんが後を追ったからあたしは追わなかった。びしょ濡れでしたちよちゃんの挨拶は、ちよちゃんらしい繊細な言葉で彩られた挨拶でした。

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