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4.本当の契約


「凜々蝶ちゃんの制服姿…メニアックッッ!!!」
「ふ、ふん。今日から学校だからな。…おはようございます…」
「ピカピカの高校一年生だものね!!」
 
朝からラウンジは騒がしかった。あたしはちよちゃんが朝食を取りにいくみたいだったから一緒に付いていきました。
 
「高等部の制服のるりちゃんもメニアックね!大人っぽくなったわーVv」
「えへへ、ありがとー」
 
あたしは青城学園を中等部から通ってた。高等部の制服も可愛いなぁ。
 
「二人とも沢山お友達できるといいわねVv」
「うん!」
 
野ばらちゃんはイスに座りながらちよちゃんに“ニーソと太ももの間に……”ってよく聞こえなかったけど言ってた。ちよちゃんは暗い目をしてたけどね。
 
「凜々蝶さま…!ここにいらしたのですね…っ、おはようございます…!!」
「ひっ!?」
「昨夜は丁寧なメールをありがとうございました…」
「あんなものはメールを打つ練習をしてたついでだ」
 
ラウンジの扉が開いたと思えば双熾くんだった。ちよちゃんからもらったメールを毎日読み返すらしい。…なんかあたしと幼なじみの双熾くんてあんなんじゃなかった気が…。
 
「そんなことより凜々蝶ちゃんやるりちゃんはドレスもう買ったの?」
「ドレス?…あぁ、懇親会の?」
 
うちの学校は所謂セレブ学校で入学式と別に懇親会というパーティーがある。ちよちゃんはそこで新入生代表として挨拶するらしい。
 
「ぬかりはない。実家から持ってきた」
「ちよちゃんの挨拶かぁ…楽しみだなぁ」
「明日絶対見に行くからねVv」
「懇親会か〜。あったなぁ、そんなの二年前」
 
学ラン着た連勝くんはつまようじをくわえて話にまざってきた。学ラン久しぶりに見たな、春休みだったから。
 
「…お兄さまは高校生でいらしたのですね」
「見えないわよね!絶対ニッカポッカか取り立て屋よね!?」
「連勝くんは大人っぽいよね!」
「フォローありがとお」
 

 
あたしとちよちゃんは同じクラスだった。ちよちゃんはドアの前で一度立ち止まり、あたしがドアをあけようとした時。
 
「こいつが首席で入学した白鬼院か。へー、こんな女に僕が負けるとはね」
「違うよ。家の力とか使ってるんだよ」
「白鬼院ていろんな所で力を持ってる旧家の令嬢だからな」
 
あ、知ってる。こういうの。
 
「つまり嫉妬か」
「ちよちゃん!?」
「こういうのは慣れてるんだ。いくらでもどうぞ?それでプライドが慰められるんならな」
「っちよちゃん!忙しいから行くよ!」
「竜条さん?」
 
あたしはちよちゃんの腕をぐいっと引っ張った。
 

 
「ああいうの、相手にしなくてよくない?」
 
早目に終わった高校生活1日目は顔合わせのみだった。ちよちゃんは双熾くんが迎えに来るみたいだけど、時間が早いからあたしと一緒に歩いて帰ることにしたみたい。だから、さっきのことについて聞いてみた。
 
「言っただろう、慣れていると」
「あたしもよく言われるけど…」
「竜条さんも言われるのか?」
 
“うん”こくんと頷いて上げた視線の先には野ばらちゃんと連勝くんだ。
 
「何してんのー?マンションの入り口で」
「おぉ。凜々蝶、るり」
「ちょっと入りづらくって」
「誰かいるの?…って、あー!双熾くんだ!双熾く―――」
「るりぃぃぃぃ!?しーっ、しー!」
 
双熾くんの所まで走ろうとしたら後ろから連勝くんに口を押さえられ引き戻されました。
 
「っぷはぁ。なにすんのよぉ、いきなり!」
「逆にお前が何してんだ」
「何ってただいま――」
「えっ」
「ちよちゃん?」
 
連勝くんの手をほどき声をあげたちよちゃんを見た。え、何?何があったの?
 
「!凜々蝶さま…」

 
「彼女じゃないんだ」
「はい、以前告白されてお断りしたのですが…これで諦めるからとお願いされて」
「え、なに!?双熾くん彼女いるの?」
「だからって普通するー?」
 
あたしが連勝くんに引きずられてる間に事は起こったらしい。何があったか聞いても誰も答えてくれないし…。
 
「部屋に戻る」
「凜々蝶さま!」
 
ガタン、とイスから立ち上がりラウンジを出ていったちよちゃんに続き双熾くんも後を追った。
 
「…ちよちゃん、変な顔してた」
「変な顔?」
「うん。悲しそうだけど怒ってた。あたし、なんかしたのかなぁ…」
 
昼間のこともある。本人は慣れてるから気にしてないっていうけど…。
 
「るりちゃんのせいじゃないわよ。悪いのは御狐神なんだから」
「そ、双熾くんがなんかしたの!?」
 
ちよちゃん第一の双熾くんが!?
 
「るりちゃんは気にしなくていいのよ」
「…うん」
 
その日はなかなか眠れなかった。


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