目覚ましの鍵
ピピピピ...
枕元の時計があたしの朝を告げる。
「……んー」
部屋の中とはいえ、まだ1月…布団から出たくない毎日だ。もちろん目覚ましを止めたってそんな簡単に起きるわけ無――
「おっはよー☆るりたん、朝だよーっ」
「…あぅー……」
来ました、朝からハイテンション。
「今日は出掛けるし、朝起きるのに自信無いからボクに起こしてって言ったのはるりたんでしょー?」
「んー……」
まぁ、そうだけども…。眠いもんは眠いし、寒いしー…。
「………おーい?るりたーん?」
全くベッドから出る気がないあたしは残夏くんに構わず二度寝を試みた―
「はい、起きるー」
「ふにゃあっ!」
―のに、布団を引っ剥がされて無理でした。さ、寒いんですけどっ。
「ほらほら、起きないと。出掛けるんでしょー?」
「ぅー…出掛けるまであと2時間あるもん…あと10分だけ寝る…」
「っていいながら、1時間半寝ちゃうよ?」
「…………視たのか」
さすがに30分で支度はキツイ。
「…わかった、起きる……」
「るりたんがいつも朝をどう過ごしてるのかわかるよねー」
まだ眠いけどしょうがない、諦めて立ち上がってみる。まずはラウンジ行くから着替えなきゃなぁ。今日は何着よう………――うん?
「あ、あの。出てかないんですか?あたしこれから着替え…」
「ん?あぁ、お気にせずー☆」
「気にするよっ!ってか、どうやって部屋に入ってきたの!?」
起こして欲しいとは言ったけど、部屋の鍵は与えてないはず…。でも普通に入ってきたよな…。
バッと振り返ると満足そうに頷く笑顔の残夏くん。
「世の中は不思議でいっぱいだねー☆」
「不思議すぎるよ!不法侵入だよ!」
か、鍵鍵…っ!あたしはいつも鍵を置いておくテーブルの上のかごを見る。………無い。
「…いつパクった……?」
「人聞き悪いなー。昨日るりたんがボクの部屋の前で落としたんでしょー」
「え、じゃあ あたしはどうやってこの部屋に…」
「出掛ける時に閉め忘れー☆無用心だねー」
百目とは便利だと改めて実感する。……で、でもさ!
「あの後届けてくれれば良かったのにっ」
落とし物は落とし主にっていうじゃない。それをそのままパクるとは…。
「はっ…犯罪者っ!?」
「酷いレッテル貼られたなー」
"はい"とあたしの部屋の鍵を受けとる。
「不法侵入者には気を付けるんだよー?」
「そんなんするの残夏くんぐら――いやぁ、はい、そうですねー」
咄嗟に出てきた言葉をなんとか飲み込む。危ない危ない、また鍵を取られるところだった…。
「ボクがなんだって?」
「何でもないですよーっ。っほ、ほら!あたし着替えるんだから早く出てってよー!」
ズルズルとうさみみスーツの背中を押し、扉の前まで連れていく。
「着替えぐらいボクがいたって出来るでしょー?」
……完全にきました。
スッと息を吸い込み、妖館全体に響くぐらいに叫んだ。
「いいからっ、早く出てってよーっ!!」
(怒られちゃったー☆)
(着替え『ぐらい』って何よっ!)
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