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冬の訪れ


「さっむーい…」

外に出ると一瞬で冷たくなった手を両手でこすり、白い息を吐く体を震わせる。

「こんな寒いと帰るの嫌だよねー」
「だったら学校(ここ)に住むんだな」

隣を歩く長い黒髪少女は少しも寒くなさそうに早歩きで前を進んでく。

「ちよちゃんも住も」
「僕を勝手に巻き込むな…。僕は帰る」

そう一言あたしに告げると白いコートと長い黒髪をひるがえして門へと歩いていった。
あー…双熾くんが車で迎えか…。

「…うらやましー」

あたしは昇降口近くの自販機で冷えた体を暖めようと、一度履いた靴を脱ぎもう一度上履きを履いた。





「ほわぁ、あったかー…」

やっぱり冬のコンポタは最高ですっ!コーンおいしー…。

「ん、着信…あったんだ?」

時計を見るために何気なく開いたケータイ画面の左下には着信があった跡。

「マナーモードだったからわかんなかった…誰だろ」

時間は…8分前?

ピリリリリリ

「ふわっ!も、もしもし!」

マナーモードを解除した携帯からいつもの着信音がなる。慌ててでた機械の先には先程まで話していた声だ。

『もしもし、僕…凜々蝶だが』
「え、ちよちゃん?どしたん?」
『…待ってるんだが?』
「へ?………何を―――」

そう言って廊下の窓の外を見た。

ちよちゃんが門の前に立っている姿がそこにあったのがわかる。

『寒いのでな…早く来てくれなきゃ僕は凍え死ぬぞ』
「なっ、帰ったんじゃ…?」

通話の合間にため息が聞こえる。

『……決して僕じゃないぞ…!み、みみ御狐神くんが!御狐神くんが竜条さんも寒いだろうから一緒に帰ろうって!はっ、僕は今すぐにでも帰りたいんだがな!』

一息に言って疲れたのか、さっきとは違うリズムの呼吸が聞こえる。合間合間に“凜々蝶さまは本当に可愛らしい方っ…!”とか言ってた声は聞かなかったことにしたい。

「…っはは」
『な、何がおかしい!』
「んーん、何でもない。ゴメン、すぐ行くねー」
『あと20秒以内に来なかったら先に帰るからな』
「えー、ちよちゃんのいじわるー」

駆け足で携帯を握りしめながら昇降口へ向かう。さっきまで飲んでたコンポタは既に飲みきり、底に残ってしまったコーンも全部飲み込んだ。

「………さっむ」

今にも雪が降りそうな白くて暗い空にむかって呟く。

「優しいんだよなぁ、なんだかんだ言ってさ…」




寒い寒い冬の日。


出会ったのは小さな暖かい心。




(おまたせー!)
(君、遅いんじゃないか?)
(凜々蝶さまがそわそわと待っていました)
(いいこと聞いちゃったー♪)


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