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はっぴーばーすでぃ


「きゃあぁぁぁぁ!?」
「ちがう、目分量でも限度はあるから…」
「フルーツフルー…にゃあぁぁぁ!!」
「床、濡れてると滑るから気をつけて…」
 
視界が白にそまる。同時に口の中に入ってきた甘い粉は頭からあたしを白くした。
 
「うぅ…ケーキってこんなに作るの難しかったっけー」
 
手に付いた白い粉をぺろりとなめた。うん、甘い。グラニュー糖です。あたしは目の前の空になったグラニュー糖の袋を拾い、もつれさせた足で立ち上がった。
 
「…やっぱあたし、ケーキ作りとか出来ない…」
「わたしとちよちゃんで作ろうか…?」
「あっ、竜条さん!また床を汚したのか!?」
「ごごごごめんなさいぃー」
 
ラウンジの厨房を借り、高校生女子組がケーキ作り。それは、昨日カルタちゃんが漏らした一言で始まりました。
 

 
「明日、誕生日…」
「え?カルタちゃんの?お祝いするよーっ」
「うぅん、わたしじゃなくて…渡狸…」
「あ、明日10日だっけ。んー…何あげようかなぁ」
「わたし明日…ケーキ作るから…るりちゃんも一緒に作る…?」
「でもあたし、ケーキとか作れないよ?」
「わたしが教えてあげる…」
「…じゃあ一緒に作る…」
 

 
ってことで、どうせならちよちゃんも!みたいなノリで始まりました、ケーキ作り。…うん、30分しない内に後悔したよね。
 
「…頑張る」
「はっ、余計な仕事を増やさないでもらおうか」
「るりちゃん、真っ白…」
 
プレゼント、時間なくて用意出来なかったしなぁ…。
 
「……るりちゃん…?」
「…ねぇ、カルタちゃん。お願いがあるんだけど…」
「お願い…?」
 
あたしは真っ白になったエプロンを握りしめた。

 
「このケーキっ…!」
 
 
***

「卍里くん、はっぴーばーすでぇいっ!お誕生日おめでとーっ!!」
「へ…?」
 
静かになったラウンジで一人クラッカーを鳴らす。あたしと卍里くんしかいないから、静かになるとなんだかなぁ…。
 
「だからっ、はぴばっ!おたおめっ」
「お、おぅ…」
「…反応薄いなぁ」
「悪かったな…」
 
あたしは“そうそう”と用意しておいた箱を取り出す。可愛くラッピングされた箱を見て卍里くんは不思議そうに首を傾げた。
 
「なんだよ、それ」
「ケーキだよー。あたしとカルタちゃんとちよちゃんで作ったんだぁ」
「…ふぅん」
「はい、おめでとー」
「え…?」
 
両手で差し出した箱を渡す。
 
「あたし達からのプレゼントっ」
 
卍里くんは一瞬驚いた顔をし、すぐにいつものように不良を飾った。
 
「あ、甘いのなんか不良は食わねぇよ」
「えー…頑張って作ったのになぁ」
 
う…と後ろに引き気味。よし、あともう一押し。
 
「誕生日、おめでとー」
「…さ、さんきゅ…」
 
おめでとう、卍里くん。
ちなみに、お願いっていうのはあたしがケーキを渡すことでした♪
 
 
(味はカルタちゃん監督だから保証するよ!)
(るりはケーキ作りとか苦手なのか…)
 

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