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雨の日



体が重い。
ポタポタと歩く度に水滴が落ちる。
洋服って水分含むとずいぶん冷たいんだなぁ。
あたしはびしょ濡れの手でラウンジの扉を開けた。
 
「…ただいまー…」
「おかえりー☆今日も学校どうだっt…どうしたの」
 
誰かいるだろうとは思ってたけどいたのは残夏くん1人だった。
 
「うぅ…濡れたぁー」
「それは見れば分かるけど、傘ささなかったの?」
「…傘忘れた」
「それはそれは…早く着替えてきなー、風邪引いちゃうよー?」
「はぁい…」
 
朝のニュースキャスターさんは降水確率0%って言ってたのに…。
あれです、どしゃ降りの中走って帰ってきたパターンです。
ずるずると水滴を落としながらあたしは部屋に向かった。
 
 

 
 
「ほわぁ、服が軽いー…」
「水を含んでれば重いのは普通だよねー」
 
一回着替えてまたまたラウンジに戻ってきました。
まだ髪は濡れてるから乾かさなきゃ。
 
「そーたんの車に乗せてもらえばよかったじゃない☆」
「だって、ちよちゃん達は寄り道するみたいだから邪魔しちゃ悪いかなぁって…」
「でも濡れて帰ってくるのは感心しないなー」
 
ですよね…。
ため息をついて残夏くんの向かいのイスに座る。

「髪乾かさないとねー」
「え」
 
残夏くんの手がのびてきたと思った瞬間、頭が楽になった。
もしかして…
 
「ほどかないと乾かせないでしょー?」
「そ、それはそうだけど…」
 
サイドにしばったポニーテールがいつの間にかほどかれていました。
 
「るりたんの髪ってきれいだよねー」
「そうかなぁ」
「うん」
 
………残夏くんの髪の方がきれいだよ。
あたしよりまっすぐでさらさらな髪。
女の子としてはその髪質憧れちゃうなぁ。
 
あ、そうだ。
 
あたしは、赤銅色の髪をまとめてる黒いリボンをしゅるっとほどいた。

「ちょ、るりたん?」
「えへへ、お返しー」
「ボクの髪は濡れてないんだけどなー」
 
知ってる。
ちょっとほどきたかっただけ。
そのきれいな髪を。
 
 
 
(朝頑張ってしばったのになー)
(残夏くんは髪おろしててもカッコいいよ?)
 
 

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