『シスターおはよう!』
「あぁ…、お、おはよう。」
相も変わらず、今日もシスターは名前さんと話すときは緊張しているようだ。
「(まあでも、話せるようになっただけマシか…。)」
リクは遠くから挨拶を交わす二人を眺めていた。二人は特に会話をするわけでも無く、そのまますれ違って通りすぎて行った。
「(…挨拶だけって…、)」
リクが呆れてうつ向いていると、そこにある人物が近付いてきた。
『ねぇ、リク。』
誰でもない、名前本人だった。
「名前さん!どうしたんですか?」
チラッとシスターのほうを見ると、気付かずに向こうに歩いていったようなので安堵した。
『ちょっとシスターのことなんだけど…、いい?』
リクは身を乗り出してブンブンと首を縦に振った。
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場所を高台、もといリクの家に移した。
「それで、どうしたんですか?」
カップに紅茶を入れて自分と名前の所に置いた。
『あ、ありがとう。あのね、…シスターって私と話す時必ず目、逸らすでしょ?』
「まぁ…、そうですよね。」
ここで【それは名前さんの事が好きだからですよー!】なんて言うほど馬鹿ではない。
『でもリクにはよく話しかけてるじゃない?』
「まぁ…、はい。」
はた迷惑な恋愛相談をさせらているわけだが。
『それで、』
ここで名前はカップの取っ手を撫でた。
『シスターってリクのこと好きなのかなって、』
「ブフォッ!!っうぇ、ゴホッ!!」
あまりの爆弾発言過ぎるセリフに、リクは飲んでいた紅茶を思い切り吹き出した。
『だ、大丈夫…?』
「なっ、何言ってんですか!?そんなことあるわけ無いじゃないですか!!」
『だってシスターはよくよく考えれば女装してるし、最近はずっとリクと話してるし、…そっち系の人なのかな、って…。』
眉間を押さえながら、リクは名前の肩を掴んだ。
「良いですか。シスターにはそういう趣味はありません。だからそういう心配は絶対に、何があっても、必要ないです!」
『そっか…。リクがそう言うならそうなんだね。分かったよ!ありがとう!』
「いえ、こんなんで良かったんなら。」
元気に手を振って帰っていった名前の後ろ姿を見て、リクは冷や汗をかいた。
「……よりにもよってあんな酷い勘違いされるなんて…。」
これからはよりいっそうシスターに頑張ってもらわないといけない、と心に感じた。
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(シスターのタイプは笑顔でいる子だもんね。よく考えるとリクってあまり笑わないし…、大丈夫か!)
(朝から名前に挨拶されるなんて…、今日はなんて良い日なんだ…。神よ感謝します。)