奇跡的に生きてました。意識あります。
目が覚めたら夕方だったけれど。
時計みたら次の日の夕方じゃなくて2日後の夕方だったけれど。
もうあんな馬鹿な真似はよそうと決意して、日課になってきている雑誌を見た。
『もし返り討ちにあったら、っていうか毎日返り討ちなんですけど…、えー
【4.嫌いになるよとほのめかしてみなさい】
ほー、やっと危害がないものがやってきた。やり返して良い結果だった人いたのか。』
これならまったく動かずに実行出来る。
『これでまた盛ってきたらほんとに嫌いになると思うけどなぁ』
自嘲気味に笑った。
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ガチャ
「…あぁ、やっと起きたか。死んだかと思った。」
『他人事だと思って…』
いったん居間に戻ったシスターは夕食を持って入ってきた。
「今日まで2人分食べてたんだからな。起きれるか?」
『いや、まったく。』
するとシスターは背中に手を回して抱き起こし、しまいには夕食のシチューを食べさせてくれた。
「熱くないか?」
『うん、平気。美味しい。』
どうやら彼も今回ばかりは反省しているようだ。
『シスターも自重って出来るんだね』
「失礼だな。そもそも前のは名前が悪いんだぞ。」
『いや私は別に………んー、うん。私が悪いわ。ごめん。』
確かに私が事の発端だ。
今度は私が反省して黙々とシチューを食べる。
『…あ、ちょっとこぼれちゃった。シスターティッシュ取って。』
口元を拭こうと頼むが一向に動いてくれない。
俺に指図するなってか。
「ん」
ビクッ『っ、わ…!』
平然とした顔でシスターはべろりと口元のシチューを舐めとった。
『もう……』
反省してんのかしてないのか。
「今ここで押し倒したら怒るか?」
『軽蔑する』
反省してねーよこの男。
「でも名前、痛いの好きじゃないか。」
『い つ 言 っ た そ ん な こ と!』
失礼な、と思ったら軽いキスを顔中にしてきた。
『ほんとにやだからね。したら本気でシスターのこと嫌いになるから!』
目を見てきっぱりと良い放つ。
たまには厳しく言ってあげないと!
とたんにシスターは目を伏せて悲しそうな顔をした。
なんだ
「……今までもそう、私のことを嫌っていたのか…?」
『え?』
「そうか、今そうはっきり言われて分かったよ。私は名前に嫌われていたんだな。」
困ったように笑いながら目を合わせて頭を撫でられる。
『や、そんなー…そこまでは、嫌ってるわけじゃ…、』
「これからは名前に手を出さない。約束するよ。今まですまなかったな。」
そう言ってシスターは私の額にキスをしてから食器を持って立ち上がろうとした。
『あ、ま、待って!嫌ってるわけじゃなくてっ、その、今したら嫌いになるかもってことでシスターのこと嫌いじゃないし…、別に痛いのだってシスターだから嫌いになったりしないし…、えっと……あの……』
まだ動く手を伸ばしてシスターの服の裾を掴み、誤解をといてもらおうと言葉を探す。
いきなりネガティブになるのやめてほしい。
『……シスター?』
後ろ姿だから顔が見えないシスターはゆっくり振り向いた。
クックッと喉の奥で笑いながら。
『は?』
「ははっ、冗談だよ。そんな必死になって…」
笑いを抑えながら私の頭を撫でる。
「私が名前を前にして抑えられるわけないだろう?」
『最低』
なおも笑っているシスター。そして私は段々と真っ赤になっていく。
『シスターのバカァ!大っ嫌い!』
恥ずかしさのあまり涙がでてくる。
シスターは笑いながらふぅ、とため息をついて、
「本心でも無いことを言うな。」
そっと唇を重ねられた。
「私に嘘は通用しない」
いつものが嘘みたいに優しいキス
「さすがに今回は襲ったりしない。教会に一人でいるのは寂しいものだと分かった。」
そして今までに無いくらい、そっと抱き締められた。
嫌いになるよとほのめかしてみなさい
まず私が彼に嫌われたくないし、そもそも嫌いになんかなれないんです。
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