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河川敷から少し離れた所にあるコンビニに立ち寄って雑誌を読んでいると、ある特集が目を引いて思わず買ってしまった。




《恋人がドSなんですがどうしたらいいですか?》








私がこの河川敷に住むようになったのはいつだったか、たくさんの家族のようなものができ、そしてそのなかで、恋人なるものができるなんて。

当時の私では想像も出来なかっただろう。




しかも、




バァン!

「名前お帰り」

『ひぃぃい!!ノックしたんだから撃ってこないでよ!!』





彼がこんなドSだったなんてことも想像出来なかった。






『やめてよ危ない!』

「当ててないから良いだろ?」

『良くないわ!』


私の家でもあり彼の家でもある教会に帰ってくるといきなり銃弾が迎えてくれた。

おまけに、左手のハンドガンを涙目の自分の彼女に構えている彼、シスターは口元に薄ら笑いを浮かべているのだ。

Sだ。タチが悪い。




『はぁ、最初の頃は優しくてカッコいい人だと思ってたのにな…』


ため息をつき、自室でさっき買った雑誌を開いた。


『なになに?5通りあるのか。【1.何をされても笑顔で耐えなさい】はい無理ー。いきなり無理きた。銃弾浴びせられて笑顔でいるとか、もはやただの変態じゃん…』


雑誌を閉じてベッドの上に寝転んだ。


『(あれでもシスターからは愛されてんだよなぁ…)』


昨日の夜を思い返せば毎夜のように好きだと言われるし、言葉や手付きは意地悪でも瞳はすごく優しい。


『はぁ…』


とりあえず彼のサディズム要素が無くなり、全てが優しくなるのならばあの雑誌を信じてみようと思う。






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『シスター今日の夕食和食と洋食どっちが良い?』

「どっちでもいい。」

『いや、その返答困るんだって…。油と卵残しておいたから天ぷらでも作ろうかな。』

「あぁ、それなら」


シスターはガチャ、と冷蔵庫を開けた。


「私が全部お菓子作りに使った。」


目に写るのは野菜しか入っていない冷蔵庫、と薄ら笑いを浮かべるシスター。


こ の 男 は !!



ひくつく口元を抑え込んでニコリと笑って見せた。


『もう、だったら早く言ってよ。じゃあポテトサラダでも作ろっかな。良いよね?』


にこにこする私を、シスターは眉間にシワを寄せて凝視した。


「悪いものでも食べたか?」

『食べてないよ?お皿準備しといてね。』


唯一無事な野菜たちを引っ張り出して袖をまくった。






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『いただきまーす』

「…いただきます」


ポテトサラダと味噌汁というなんとも言いがたい組み合わせだが、余り物で作ったにしては良い出来ではなかろうか。

そして、なにより、


『(こんな安全に料理出来たの久しぶり…!)』


終始にこにこしていた私を見ていたシスターはずっとなにかを考えるように椅子に座っていた。

普段なら
いきなり私のうなじにキスを落としてきたり、味見をするといって3分の1程食べていたり、

ことごとく邪魔をしては怒る私をあざ笑うのだ。


『(あの雑誌信じて良かった!)』
「ところで」

『え、なに?』


自分の世界に入っていると、突然シスターが話しかけてきた。


「今日はどこかに行ってきたのか?」

『あぁ、コンビニ行ってたよ。』


おかげで素晴らしい本に出会えました。


「その格好でか?」

『?なに?』


お茶を飲んでいたシスターはコップを置いて身を乗り出した。


「私からしたら好都合だがな。」

『ひゃっ、え、なに?』


そして私の首もとに軽くチュッと口付けてからごちそうさま、と片付けに行った。


呆然とする私はそのまま食器を片付け、部屋に戻った。






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『何だったんだろう…』


私の格好は特に目に余るような露出もしていないし、シスターの好都合にでもなるような服は着ていない。


全身が写るスタンドミラーの前に立って首元を見た。


そこには、




『!!!!!!』




普通のTシャツを着ても分かるような位置にある、




キスマーク。




なるほど、どうりですれ違った星とリクに二度見されたわけだ。












『シスターー!!!』



何をされても笑顔で耐えなさい


笑ってすむレベルじゃないです。
シスターが喉の奥で笑っているのが目に浮かんだ。




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