「なぁ、ほんとリクルートうざいんだけど」
『はいはい、それ昨日も聞いた。』
「もうちょっと俺を気遣えよー」
お前は私の気持ちを気遣え。
鈍感な彼のセリフ
私が星を好きになったのはだいぶ前。
いつだったかもう忘れてしまったけど、凄く好き。
しかしそんな私の気持ちも知らないでこの男は軽々と話しかけてくる。
話せるのは、嬉しいけど。
「あいつわざと俺の前でニノとイチャイチャしてるとこ見せるんだぜ!?」
『気にしなきゃ良いじゃない』
「気になるんだよ!嫌でも視界に入るし!」
『目つぶってなよ』
「冷てーなー」
『はいはい』
草むらに座って本を読む側の地面に影が降りたと思ったら、星は私の隣に腰かけてきた。ちらっと横を見ると彼はまっすぐ先にある荒川を眺めているのか、目は合わない。
「俺さ、ニノの事好きだったろ?」
『私が河川敷に来た時はすでに末期だったね』
「でもな?今はそうでもないんだよ」
『そうなの?…ニノに彼氏ができたからじゃない?』
「違うんだよー」
『なに?』
「んー、よく分かんねぇ。何でだろ。忘れろ。」
『何さ、気になるよ!』
「そうだ、…この間P子と話してるの偶然聞いたんだけどさ、」
『この間…?………!!』
先日P子と恋愛関係の話をしたのを思い出した。
『な、何を!?どこまで!?』
星の肩を思い切り揺さぶった。
「お、落ち着け!悪かったけど、全部は聞いてないって!」
『なにを聞いたの!?』
「…お前に好きなやつがいる、って事…」
『……!!』
「…悪ぃ」
終わったと思った。
でもこんな形で失恋なんて
「それで…、その、好きな奴って、誰?」
……
『そ、そこは聞いてないんだ…?』
「通り過ぎただけだから…」
なんだ…
『もう!言わないわよ、バカ!!』
「は、はぁ!?そんな怒んなくても良いじゃねぇか!」
『うるさい!教えない!あっち行けバカ!!』
好きな奴って、誰?
…良かった
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