泣くほど好き
(星視点)
コンコンッ
もう2日以上名前と会話してない…、とトレーラーの中でボーっとしていたら、ノックの音が聞こえた。
「誰だ…?」
「私よ。」
!!
ドアを開けてその人物を確認すると、そこにいたのはふふ、と笑いながら腕を組んでいるマリアだった。
「な、何の用で…」
「あら、そんなに怖がらないで。今日は苛めに来たわけじゃないから。」
今日『は』!?
「名前の事。」
「!!」
いきなり今一番気になっている話題をふられた。
「名前が…、どうしたんだよ…?」
「正直に答えてちょうだい。名前の事、どう思ってるの?」
「なっ、いきなり何だよ…!」
「答えなさい。」
なんなんだよ
「……好きだ。」
「そう。」
何!?俺、殺されたりするのか!?マリアは名前の事軽く溺愛してるからな…。
そう思って身構えていると、
「なら、良かったわ。名前今教会にいるの。行ってあげて。」
「…え」
予想していた事をかすりともしなかった。
「なんでそんないきなりなんだよ…。」
「名前はもう限界なのよ。泣くのを我慢してるの。今回は私たちにも責任があるし…。」
最後の言葉は意味がよく分からなかったが、名前が泣くほど傷ついてる事を知って、自然に足を教会へと走らせた。
「ふふ、もうすれ違わないで欲しいわ…。これでハッピーエンドかしら。
まったく……疲れた。」
ーーーーーーーーーーーーーーー
俺が教会に向かっている途中、ふと思い出したのは初めて会ったときの名前の顔。
凄くきらきらした目で、眩しいくらいの笑顔で、話しかけられて、
思えばあの時点で一目惚れしたのかもしれない。
「はぁ、はぁ…、着いた…。」
気づけば教会に着いていた。
「入るぜ。名前、いるか?」
中に入ると誰もいなかった。
マリアのやつ、嘘ついたのか…?
そう思った時、部屋の隅っこで体育座りをして膝に顔を埋めていた少女を見つけた。
「…名前?」
『!!ほ、星!?何でいるの!?』
肩をびくつかせてこっちを振り向いた名前。
やっぱり
泣いてない。
「名前。」
『どうしたの?星!教会に来るなんて珍しいね!』
だからそうやって
「そうやって強がんな」
『っえ、え?』
いきなり手を引っ張った俺に名前はビックリしていた。俺だって自分の行動に驚いている。
『ほ、星…?』
「お前、いつも無理やり笑ってただろ?笑いたくもないのに笑ってんじゃねぇよ。泣きたいなら素直に泣けば良いじゃねぇか。
なんで我慢すんだよ。」
『星…。』
「俺だって自分の気持ちに嘘ついてたけど、今は後悔してる…!
俺がニノと話してたらお前が凄く悲しそうな顔してたのも知ってた!
そのたびに俺、ずっと胸が苦しくなって、でも名前もこんな気持ちなんだって思って、今もそんな悲しい顔してんのも全部俺のせいだって、それで…、
だから…
ごめん…。」
マシンガントークを終わらせて名前の手を強く握りしめた。
『星…、私、ね、星の事好きだよ。ずっとしつこくてごめんね。』
「何で名前が謝るんだよ…。」
『だって、星、嫌がってたでしょ?』
ああやっぱり俺、馬鹿だな。
「恥ずかしかっただけなんだよ…。だからずっと逃げてた。俺、名前が好きだ。」
『嘘つかないでよ…。』
「嘘じゃねぇよ。俺の一世一代の告白無しにすんな。」
『ほんと?』
「ほんと。」
『私の事好きなの…?』
「あー!もう!何回言わせんだよ!!好きだっつってんだろ!!ここの河川敷の誰よりもお前の事が好きだ!!!」
恥ずかしっ
もしこれが野外だったなら死んでいる勢いだ。
っていうか名前が俺の胸に顔を埋めたまま動かない。可愛いからやめて欲しいんだけど。
「名前…?」
『星…、私今死んでも良いくらい嬉しい。』
「俺も。」
『星の事大好き。』
やっと顔をあげたと思ったら、目に涙を浮かべてて、瞬きしたらそれがこぼれ落ちた。
すごく綺麗だった。
『あはは、星のせいで泣いちゃった…。』
そう言って見せた笑顔に見とれて、思わず
口付けた。
ハッと気づくと名前はきょとんとしていて、俺は
「(やっちまった!!!!!!)」
と後悔した。
『ほ、星…、今…』
「あぁー!!あぁー!!!忘れろ!!ていうか、悪い!!つい!!」
『私…、ファーストキスだ…。』
「えっ、マ、マジで…?…って何喜んでんだ俺!ほんっとゴメン!!」
『私、嬉しい!星大好き!大好き!!』
ぎゅうっと思いっきり抱きしめられた。
後ろから抱きつかれた事はあったけど、正面から抱きつかれた事は無い。
「っ!!//////」
一気に血が顔に集まった気がした。
だからその顔を見られないように俺からも強く抱きしめたら、
『星、心臓うるさいね。』
と言われた。
でもお前の耳も十分赤い、とは言わないでおいた。
ごめんね、ありがとう、大好き。
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