「リリー殿…頼みたい事があるのだが…」
店を開いて初めてのお客さんはまさかのラストサムライ。
『えーと、つまりラストサムライさんはP子ちゃんに花を送りたいんですね?』
「いかにも」
『分かりました。どんな花が良いですか?』
「ぬぅ…それが良く分からなくて、ただP子殿を見ているとあまりの可愛さで、贈り物でも良いのできっかけが欲しくなったのでござる。」
『なるほど。ちょっと待っていてくださいね。』
そう言ってリリーがラッピングして持ってきたのはレースフラワーという花。
『可愛い花でしょう?可愛さと綺麗さのどっちも持っているような花です。』
「確かに…」
『この花の花言葉は【可憐な心】です。P子ちゃんにもぴったりだと思いますよ。』
「おぉ!リリー殿!かたじけない!!行ってくるでござる!」
ラストサムライさんは美容師をやっているらしい。今度ぜひ来て欲しいと迫られたので髪が伸びたら行ってみようと思った。
『(ラストサムライさん、上手くいくと良いな…)』
鼻歌を歌いながら花に水をやった。
「「リリーさーん!」」
『こんにちは。今日も二人とも元気だね。』
勢い良く入ってきた兄弟たち。
小屋はあの後少し改造して、ドアを外してその横にカウンターのようなものを取りつけた。
お菓子屋さんのようだ。
「リリーさん!さっきラストサムライとすれ違ったよ!あの花ってここのだよね?」
『そうだよ。プレゼントするみたい。』
「へぇ〜、良いなぁ、僕たちもリリーさんの花欲しい!」
『え?ふふ、良いよ。好きな花持っていって。』
「リリーさんが選んでよ〜!」
『ん〜、どんなのにしようかなぁ…』
ちょっと待っててね、と言って花を探した。
『(男の子だからなぁ…。)あ、これは?』
「わぁー青い花だ!」
「綺麗な花ー!何て言う名前?」
『これはブルースターって言うんだよ。ピンクとかよりこっちの方が良いでしょ?』
「うん!!やったー!リリーさんありがとう!」
「ありがとう!!」
『どういたしまして〜』
茎に小さなリボンを結んで渡したブルースター。
花言葉は【信じあう心】
あの二人がずっと仲良しでいますように。という願いを込めて。
「リリー、なかなか様になっているな。」
『あ、シスター、さっきぶりです。』
昼以外はほとんど教会にいるリリー。
シスターと会うのは全然珍しくない。
「評判は上がっているな。」
微笑みながら言うシスターに、心が温かくなった。
『でもそろそろ閉めます。シスターのクッキーが食べたくなってきました。』
「なら一緒に教会に戻ろう。」
『はい』
リリーの花屋の開店日程は月・水・金。
開店時間はリリーの気持ち次第。
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「美味しいか?」
『はい!すっごく!』
「そう言えばさっきラストサムライが呼んでいたぞ。」
『あ、さっきのかな?』
「何かあったのか?」
『ラストサムライさん、P子ちゃんに花を贈りたくて私の所に訪ねてきたんです。』
「なんだ、そういうことか…」
『何がですか?』
「いや、なんでもない。ラストサムライは河岸のどこかにいるそうだ。」
『分かりました。行ってみますね。(ラストサムライさん…、失敗しちゃったのかな…?)』
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『(あ、いた…)ラストサムライさん。』
「あ、リ、リリー、殿…」
ゆっくりと振り向いたラストサムライ。
『…どうでしたか?』
「聞いてくだされ…
実は…、
P子殿は快く誘いに乗ってくれたでござる!!」
『え!そうなんですか!?それは…なにより…』
「これもリリー殿のおかげでござる!本当になんと言って良いか…!」
両手をブンブンと振られ、全力でお礼を言われた。
『わ、私はラストサムライさんの誘いが上手くいっただけで十分です。良かったですね!』
「め…女神…!!」
また深くお礼をされてから手を振って別れた。
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(星、リリー殿は素晴らしい人だな…)
(はぁ!?な、何があった!!聞かせろ!!)
(この花胸ポケットに入れておこう!)
(そうだね!落とさないようにしなきゃね!!)