友情と天使と金星女王


あれから一週間後、星のレコーディングも無事終わり今日は綺麗な星空だ。


『満月だから明るいなぁ…』


窓から月を覗くと少ししか見えない。


『雲かかってるのかな、残念。シスターおやすみなさい』

「ああ、おやすみ。」


頭にシスターのキスを受けてからベッドに入った。



あの雲があの時の人の影だとも知らずに…





ーーーーーーーーー





次の日の朝、私はリクの声で目を覚ました。



ドンドンドン
「シスター!大変ですー!助けてください!!」

「朝からなんだリク…」

『どうしたんですか?』


ドアの向こうにいたリクは背に人を背負っていた。


『…あれ、この人』


シスターはすぐにその人を仮眠室のベッドに寝かせた。





「ほう、橋の欄干の上で干からびていたと…」
『この人ほんとに病でも患ってるのかな…』

「リリーさん、この人と知り合いですか?」

『え?ああ、知り合いというか、この人一週間前に河川敷に入ってて。結構気が病んでる人。』


この服はいったい何だろう…





「む…?」

『あっ、』
「気がつきましたか!?」


「ここは一体…?私は確か昨晩エキセントリックな子供達の手によって欄干の上に…」

「何ですって!?」


リクはその言葉でいろいろ合点がいったようだ。


「全く許せませんねあいつら…!あんな所にムリヤリ押し上げるだなんて!」

「?君、何を言ってるんだね。上ったのは私の意志だが。」

「?」

「もっともこのスペシャルスーツがなかったら…太陽の熱で黒コゲだったかもしれんがね……」

「…は?」


合点の行ったリクの目はまたたく間に点になった。
そんなリクに目もくれず彼は部屋と周りの人物を見渡し、その途中で目が合った。



「ん?あぁ、天使!君もいたのか!」

「て、天使?」


うろたえたのはリクではなくシスターだ。


『いやあの、だから天使では…』


その時後ろの扉が開いた。


ギィ…
「よう…何かお客さんが来てるんだって??」

『ひゃっ!』


白昼夢のような登場に思わず飛びのいてしまったがシスターが受け止めてくれた。


「君達は先日の!」

「はっ!?こいつらの事ご存知なんですか?」


「おー、お前はこの間の!」

「俺らの事幻覚呼ばわりしたやつじゃねーか!」


その言葉にリクは笑う


「ハハハ、幻覚!そう思いたくなるお気持ち分かります!」

「まぁ、後ですぐ真実に気づいたがな、」



あら、この人案外普通の人かも…



「彼らが幻覚ではなくーーー…







異星人…だという事に……!」







?(・ω・)(・ω・)?



リクと2人して同じ顔になった。




ーーーーーーーーー



それからというもの、村長と星とシスターが噛み合ってないがフィーリングはぴったりな会話を繰り広げて、すっかり入れなくなった。


「リリーさん、これが住人の増える瞬間ってやつでしょうか…」

『うーん、どうだろうねぇ』

「(だがこれ以上電波を増やしてられない!)」


リクはスッと前に出た


『何するの?』

「目には目を、電波には電波をです!!」

『??』






「君達が異星人だっていうのは分かってるんだ、おとなしく…「ふっ…それは違うな…」



リクーーー??



「異星人は私ーーー…
私が金星人だったのだ!!」


「!!?なん…だと…!?」

「えっ、マジで!?」

「えー初耳〜」



村長と星は真剣なのか悪ノリしてるのか…



「昨晩見た少女と同じタイプのエイリアンだな…!?」

『…ニノの事?』

「その通り、君が見た少女は私の仲間さ…。しかしその力は私とはケタ違いだ…」


リクは顔の影を濃くする。



「彼女が本気になれば、地球など3日で滅亡するのだからな!!」



「「「「な!?」」」」

「(いや、外野は"な!?"じゃねーだろ!!)」


「そんな核よりも強力な…!!」

『シスター、ニノをなんだと思ってるんですか。』



「ごほん、…だが安心したまえ、今のところ我々はこの星を気に入っている…」


リクがとどめだと言わんばかりの笑みを浮かべる。


「しかし彼女は何がきっかけで暴走するか分からない。地球のためを思うなら、



一刻も早く、ここから去るんだね…!」




その瞬間彼の体に稲妻が走った。ように見えた。


「逃げる事しかできないのか…?放っておく事しかできないのか!!」


ガクッとうなだれる彼


「まぁそう自分を責めないで……、帰れ!」

『リク、願望がストレートに口から出てるよ』


「戦いたい…!しかし一人では……、一人でかなう相手では……!!」







「チッ…、誰が一人だって……??」


彼の肩に手を置く村長。
その後ろで微笑む星とシスター。


「俺達がいるだろ隊長……」

「諦めたらそこで地球滅亡ですよ…!」


「み…皆…!?」


「さっ…、立てよ…」




それが友情ってもんだろ…?




『リク、私男同士の友情ってよく分からないよ…』

「あれは電波同士の友情だから分からなくても大丈夫です。」


リクはやつれてた。



ーーーーーーーーー




「この青い星を守るんだ!!天使!君も力を貸してくれ!!」

『えっ?あ、…え?』


咄嗟のことに思考が追いつかない。


「隊長ダメだ、天使はか弱い。俺達の守護対象にある。」

「なるほど、じゃあ君のことも僕が守るから見守っていてくれ!」

『あ、…は、はい…』


少しだけキュンとしてしまった。


「なんとしても金星女王を倒してみせる…!」

「ちょっ、あの…!」




ガチャ
「お?どうしたんだ?何だか知らんのがいるが…」




「金星女王だァーーーー!!!」

「「よっ、ご両人!」」


「ニノ、この人とちょっと金星の話してやって!」

「金星!?」

「河童!!お前ら遊んでんな!?」



「ついに現れたな金星人…!君の本性は分かって…」


ニノは笑顔で自分の懐に手を入れて何かを探している。


「な、何だ…!いきなり武器を出す気だな…!やはり貴様を野放しには…っっ!!」


彼が喋っている口めがけてニノは鮮魚を突っ込んだ。


『あれは…歓迎のお魚』


ウナギにエビに、次々突っ込んでいく。



「…ウェッ……この地球は悪の金星人には渡さんからなぁっ!!!」



えづいて涙を浮かべる彼は吐き捨てるように叫んで教会を出て行った。



「これで終わったと思うなよォーーー!!!」




ーーーーーーーーー





少し心配になったので後を追ってみると川で口をゆすいでいた。


『大丈夫ですか?』


ハッとして振り向いた彼は私の顔を見ると、君か、と言って立ち上がった。その顔は水でびしょ濡れになっている。


『あ、これ、どうぞ。』


白いハンカチを差し出す。


彼はハンカチと私を何度か交互に見てからようやく受け取ってくれた。


「ありがとう。……やはり金星女王は強い…、今のままではどうする事もできないな…」

『……』


否定するべきか否か。


「だがいつか果たして見せよう!君のことも守り、地球を救ってみせる!」

『(なんだか否定するのも可哀想…)』



こんなにも彼はいきいきしているのだから。



「君のことが気に入ったよ。名前聞いてもいいかい?」

『リリーです。』

「そうかリリー、じゃあまた来るよ。その時にこれは洗って返す。」


彼は片手に持ったハンカチをポケットにしまって、今度こそ河川敷から出て行った。




あの人の名前聞いてないや。




今度会ったときに聞こう。




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(リリーどこいってたんだ?)

(あいつが残した魚食べるぞ!)

(え〜パーティみたいになってる…)

 

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