あけまして




「リリー!私がいない間にニノみたいに恋人つくったりしないでね!!」

『あれデジャブだ。』



年を越して、寒さが増してきた河川敷にも少しの活気が溢れてきた。

お年玉と称してシスターと作ったお菓子を配るリリーはその道中、支度を済ませたP子と出会ったのだった。


『あけましておめでとうP子。今年も実家に帰るの?』

「そうよ。でも今年はその、…村長と年越ししたかったから今日まで残ってたんだけどね!キャッ!」


ルンルンとご機嫌な様子でトラックに乗り込むP子。

そう言えば昨日はP子の姿が見えなかった。ずっと村長の側にいたのだろう。


『冬野菜の扱いも慣れてきたし、今年も畑は任せて。』

「ありがとう!助かるわ!ほんとニノとリリーにしか頼めないのよね。」


ドアを閉めてエンジンをかける。


「じゃあ村長たちとも挨拶したし、最後にリリーと話せてよかったわ。」

『そんな戦場行くみたいな言い方。』

「行ってくるね!」

『行ってらっしゃい!頑張ってね!』


リリーはトラックが見えなくなるまで見送った。


「あ、今のトラックP子のですか?」

「あいつも忙しいやつだな。」

『あ、リク、星あけましておめでとう。今年もずっと起きてたの?』

「おう!まだまだ元気だぜ!」

「俺にとっては大迷惑だったんですけどね。」


星の計画通りリクのお正月は邪魔されたようだ。


『あ、そうだ。これお年玉代わり。』


手元のお菓子を二人に渡した。


「お、サンキュー!リリーの手作り?」

『シスターと私の手作り。』


そう言うと星は複雑そうな顔をした。


『リクは?』

「や、俺は…」

『そっか…』
「あ、もらいます。」


リリーの寂しそうな顔と星の無言の圧力に、さすがのリクも耐えることができなかった。


『ニノどこにいるか分かる?』

「ニノさんならまだ寝てます。」

『あぁ、ニノにはお正月もなにも関係ないもんね。じゃあこれニノに渡しといて。』


残った2個のうち、1つをリクに渡す。


「ありがとうございます。ニノさん喜びますよ。」

「あと1つ誰のだ?」

『これは村長。』

「村長なら酒瓶持ってシスターんとこ行ってたぜ。」

『朝からお酒…?よく飲めるなぁ。』

「体に悪いですよね。」

「リリー飲まないのか?」

『私は料理作って食べるだけかな。』

「きっと住人全員集めてやるよな。俺リリーの手作り楽しみにしてるわ。」

『もー、そんな期待しないで。よし、じゃあ準備してこよっかな。』

「俺も楽しみにしてます。」
「頑張れよー」



そしてリリーは教会の方へ向かった。




――――――――――――――





「おー、リリーあけおめ。」

『あけましておめでとうございます。これ村長にお年玉ですよ。』

「サンキュ、毎年毎年よく作るよな。このクッキー、シスターも作ってんだろ?」

「はい。今年はチョコクッキーです。」

「ほー、美味そうだな。じゃあこの流れで宴会の料理作ってくれ。」

『はいはい、そのために戻ってきたんですから。今作りますよ。』

「サンキュ。」






こうして着々と準備は進み、教会の前にはたくさんの住人が集まっていた。



『ほら、風邪ひいちゃうからちゃんとマフラーしてね。』

「うん!」

「「(親子にしか見えん…)」」


星とシスターはリリーにマフラーを巻いてもらっている鉄人兄弟を羨ましそうな目で見ていた。


「あら、リリーあけましておめでとう。」

『マリア!あけましておめでとう!』

「あの変態の側に来るのは気が引けたけど、リリーに挨拶しに来たのよ。」

『?うん、ありがとう。』


ブシュッ

「うわ!シスターどうしたんですか!?」

「気にするな」




「よっしゃ!じゃあ恒例の俺のソロライブだ!」

「わ〜!星さんカッコいい!」




「おいリリー、お前も星のライブ見ていけ。」

『あ、ニノ!あけましておめでとう。』

「あぁ、おめでとう。そうだ、クッキーありがとな。」

「ニノさん袋の音で起きたんですよ。」

『すごいね、さすがニノ。』




「あ、リリーちゃん。今年もマラソン大会で優勝目指すから応援してくれよ!」

『はい!今年は粉が無くならないように気を付けて下さいね!』




「リリー殿ー!あけましておめでとうでござる!!」

『わあ、ラストサムライ!あけましておめでとう!』

「今年こそ拙者と二人だけでデ、デート「リリー!!俺の歌聞いてるかー!?」」

『聞いてるよー。』

「(ぐぅ…、星め…。)」
「(お前だけ良い思いさせてたまるか!)」

『?』




「リリーちゃん、あけましておめでとう。」

『ジャクリーンさんにビリーさん!あけましておめでとうございます。』

「あぁ、クッキーの礼を言いに来た。ありがとな。」

『そう言えばジャクリーンさんに渡しておきましたもんね。』

「美味しかったわ〜」

『えへへ、良かったです。』




「おーいリリー!お前もこっち来て酒飲めよ!」

『朝からお酒は結構ですー』

「良いじゃねーかよー」




見渡す住人の顔は去年と同じきらきらした笑顔だった。



今年も河川敷は元気そうです。




―――――


(皆さん今年もよろしくお願いします!)

(こちらこそー、ってことで酒)
(もう!)

 

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